漆黒の猫
眠りから覚めると、恐ろしく恨めしそうな顔でオレを凝視する女がいた。
『ソ リ ュ ー〜〜〜』
あまりの形相に驚いたオレは飛び起きる。心臓がバクバクいってる。
『さ〜ぼ〜る〜なぁぁ〜〜』
恨めしそうな声は続く。
ソニアだ。普段は可愛らしい顔立ちのくせに怒ると鬼のようになる。
『まったく使えない猫ねっ。いつまで寝てるのよ!』
ふん。
使い走りにしておいて使えないとはなんて言い草だ。
『さあ、ソリュー。さっさと出発して頂戴。』
はいはい。わかったよ。
生返事を返してオレは毛づくろいを始める。
『・・・・・。』
これが終わるまで次の行動に移さないのを知っているのだろう。
ソニアは不服そうにため息をついたが黙っていた。
さて、と。
毛づくろいを終えて立ち上がった。
『頼んだわよ。ソリュー。』
ようやく動いたかといわんばかりでそういうと
声の主は去っていった。
やれやれ。ようやく行ったか。
出会った時はこんなに騒々しい人間だとは思ってもみなかった。
初めて会った時彼女はオレの目を覗き込んで言った。
『あなたは、特別な猫なのね。』
そしてこう続けた。
『私はソニア。あなたの様な“特別”を探していたの。お願い。力を貸して。』
人の言葉を解するというオレの特異を見透かしたソニアに、オレもまた“特別”を感じた。
そんな彼女に興味もあったし、彼女と関わることで暇つぶしにもなると思った。
だから、オレは彼女の願いを拒まなかった。
時折安請け合いしたかとも考えるが、まぁいい。それなりに楽しいからな。
ソニアがオレに言った言葉を思い出す。
『運命の環を廻すのよ。手伝って頂戴。ソリュー』
オレはソリュー。
運命を廻す漆黒の猫だ。
すべては、ここから。。
読んでくださってありがとうございました。この場を借りてお礼致します。