人が造りしモノ
「……で、今回は何?」
「ヒナンゲリオンは基本的にインドアのため、書くネタが無いようです!」
「そりゃそうだ。こんな怠惰な生活してて出会いがないだの笑わせんなって話よね」
「そこで、過去話をぶち込むようです!」
「家族を売るとは堕ちたモノね……」
「確かに変人の周りには変人が多いですからね……ネタにはなるかと」
「生け贄は誰?」
「姉のミナコです」
「流石に母親は避けたか……」
「バレたら私刑ですからね。おいそれとは書かないでしょう」
「確かに……」
「じゃあ、過去編にいきますか?」
「仕方ないわね」
10年くらい遡る。
これは私がまだ麗若きJK(地味な子の略ではない)だった頃の話。
……むぅ。( ̄д ̄;)
私は自室の『ひなこ庵』にて短歌を詠んでいた。
やきいものぉ~…甘きぃかほりにぃ~身をこがれぇ~…くいにぃいたるはぁ~\(´д`;)←(ノッてきた)
「何やってんの?」
∑(゜д゜;)〃ビクッ!
我ながら恥ずかしい歌を詠み耽っていた私にかけられた声に身を跳ねさせる。
お姉……ちゃん?
し……シュクダイれす。
(゜ε゜;)………。
こっ恥ずかしさにキョドる私をジッと見つめる姉。
(*/ω\*)見ないで…。
「ヒナ、お願いがあるんだけど……」
神妙な面持ちで私を見る姉にドキリとする。
何?……おねいちゃん。そんな目で私を見つめて。
(´∀`)y-お金なら私も無いぜ?
「料理を教えて欲しいの……」
姉の目は真剣だった。
ふざけてゴメンよ、マイシスター……。
ウチは両親が共働きのため、家事は分担制。
掃除大臣、洗濯庁長官が姉で、食糧担当大臣が私。
母は大統領で、父は馬車馬だ。
父には気の毒だが、女系家族なんてそんなもんだ。
基本的に担当大臣の職務については『不可侵条約』が結ばれているため、互いの職務に口出し出来ない。
文句を言うと「お前がやれ」と勅令が下る。
どしたの? 急に……。
男か? 好いとる男でも出来たのか?
ん~?
(´∀`)yアゴクイッ!
「そんなんじゃないって……」
はにかむ姉に萌える変態な私。
「大切な人に食べてもらいたいの」
甘酸っ(@゜∀゜@)ぺぇ!
それを人はアイと呼ぶんだぜ!?
良かろう!( ̄^ ̄)
可愛い姉のためだ! このヒナコが一肌脱ごうじゃないか!
「教えてくれる?」
上目遣いで瞳を潤ませる姉に、私が上から言った。
シェフトリーヌと……そう呼びな。(´+ー`)
眩い笑顔に萌える私の手を、割と強めに姉が引く。
お待ちよ姉さん!
(;´д`)-σ(‘∀‘)
ドタドタドタ!
我が姉ながら、この行動力には驚かされる……。
台所に連行された私は、流し台の姉に問う。
何を作りたいの?
「んとねー…オムライスっ!」
(*‘∀‘)♪(´∀`;)
オムライスとな?!
小学生かよ? 私も好きだけど……。
分かったよ、お姉ちゃん……。
私は冷蔵庫から鶏肉と玉ねぎを取り出す。
よく見てなよ?
私は鶏肉を一口よりやや小さめに切る。
それから玉ねぎをみじん切りする。
(;´∀`)これくらいは分かるよね?
姉を見ると、姉は目を滲ませながら鼻を啜ってる。
姉さん……玉ねぎが目に染みたの?
近すぎなんだよ?
「ヒナ、手伝えることは無い?」
じゃあ、卵の黄身と白身を分けてくれたまい!
「分かった!」
(@‘∀‘@)/まかして!
鶏肉と玉ねぎを炒めながら姉を見ると、姉は卵を前に固まっている。
どしたの?(゜∀゜;)
姉は卵が入った小鉢を凝視していた。
その手には割った卵の殻が……。
やっちまったか~!
小鉢の中で破れた黄身が白身と一体化しようとしていた。
「ヒナ……ゴメンね」
(´;ω;`)くすん
(´∀`;)泣くなよ…。
案ずるな姉よ!
やっちまったことは仕方がない!
気にしないでカラザ取って。
私に言われて姉は私の腰をギュッとつかむ。
(‘∀‘)こう?
姉さん……お戯れを!
(´∀`;)何が?
(‘∀‘)カラダ!
バカヤロゥお姉さま! カラザだよ! 黄身のトコの白い『ξ』なヤツだよ!
「カラザって言うんだ! 知らなかったよ」
ヒナ(‘∀‘)スゴいっ!
前はこんなだった姉も、今じゃマトモなんだから、結婚って人を変えるね。
姉がカラザを取り、かき混ぜ始める。
白身を良く切ってね。
(‘∀‘)ナニ?
何でもない……。
炒まったモノにライスを投入し、塩コショウする。
私の料理をジ~ッと見つめる姉。
ケチャップを入れてフライパンを振る。
ダマにならないように、ライスを潰すように平たくならしながら、斑だった赤を混ぜて均等にする。
お姉ちゃん、卵はどうしたい? ふわトロ?
(‘∀‘)ふわトロっ!
チキンライスを皿に盛り付けて、ペーパーで拭いてから、バターを馴染ませて溶き卵を入れる。
火を弱め、卵をオムレツ型に成型すると、姉が歓声を上げる。
おぉー!(‘∀‘)♪
パステルイエローのオムレツをチキンライスに乗せて、箸で切り開く。
(@‘∀‘@)ヒナスゴい!
子供のようにはしゃぐ姉に照れながらも軽くヒク。
社会人何年生だよ……。
嗚呼(´∀`;)姉よ…。
出来上がったオムライスを姉が実食。
(@‘∀‘@)うまいっ!
姉の喜ぶ顔に私も嬉しくなる。
(@‘∀‘@)-σあーん!
(´∀`;)ナニ?
美味しいからヒナも一口食べて!
(@‘∀‘@)(´~`;)
(@‘∀‘@)どう?
(´∀`;)ウマイよ。
(@‘∀‘@)~♪
(`д´#)何なんだコレ!
付き合いたてのカップルかよ!?
それから、姉の料理修行が始まった。
夕食後に始まる姉のオムライス地獄……。
味見役はパピー。
毎日毎日、来る日も来る日もオムライス……。
凝り性な姉の怒涛のオムラッシュの日々が続く。
ガンバれ! モルモッターマサオ(パピー)!
オムラッシュが2週間を迎えた頃、流石のマサオも疲労の色が隠せなくなっていた。
(´~`;)パピー……。
姉が私に今日は自分が夕飯を作ると言って来た。
いよいよ私たちにもオムラッシュが……。
瞳を輝かせる姉に嫌とは言えず、了承し、覚悟を決める。
パピーばかりに辛い思いはさせられない。
私たちは家族なんだ!
ご機嫌な姉が鼻唄まじりに料理する後ろ姿を見つめる私。
何故、鼻唄がディープパープルなんだ? 姉よ。
しかし、つい最近まで料理したことがないとは思えないほど手際が良い。
(;´∀`)ナニ作るの?
(゜∀゜@)ナ・イ・ショ!
どーせオムライスだろ?
心なしかパピーの顔が浮かない。
貴様はオムライスを食い過ぎた!
出来上がり、食卓に着く私たち。
ほら! オムライスじゃねーか!ρ(`д´#)/
しかし、旨そうだ。
オムライスにそれぞれの名前がケチャップで書かれている。
『ママ』、『ヒナ』、『ミナ』、『パハ』
どうやらパパと書くにはケチャップが足りなかったらしい。
いとあわれなりパハ!
一口食べて見る。
(´~`;)もぐもぐ。
ウマ(@゜∀゜@)ーイ!
卵に少し生クリームを足しやがったな!
教えてないテクニックを使うとは、侮り難し姉!
家族が旨い旨いと食べる顔に、姉は終始ご満悦。
やっぱり嬉しいよね!
これに気を良くした姉は私の料理を手伝いながら、料理の腕をメキメキ上げていった。
それから数ヶ月――。
私が高校卒業を数日後に控えたある日。
「わたし! 一人暮らししますっ!」
∑(゜д゜;)ファッ!?
まさに青天の霹靂!
どうした姉よ!
訊けば、前々から一人暮らしのための準備を着々としていたらしく、場所も既に押さえてあるという。
恐ろしや姉の行動力!
斯く言う私も家を出るんだけどね。
(@゜∀゜@)~♪エヘヘ
そして、私の卒業と同時に、私たち姉妹は家を出たのだった。
さらに驚くべきは、その後の姉の突然の結婚発表!
実は一人暮らしではなく同棲で、早々と入籍も済ませていた。
全て事後報告!
怒る父、笑う母、言葉もない私。
義兄は優しそうな人だし良いじゃないか!
披露宴ではオムライスの思い出をパピーが朗読。
会場の笑いをかっさらった。
姉のウェディングドレス姿はめちゃんこ綺麗だったなぁ……。
羨ましい(´∀`)~♪
秋になると思い出す姉との思い出でした。