パカパカッパー
パパパパッパラパ
パッパラパパパパパ~♪
「隊長! ヒナンゲリオンしょじょー機、出撃可能です!」
「休日に珍しいわねぇ……って、待ちなさいっ! 黙ってたら分からないのに変な言い回しは止めなさい! ヒナンゲリオンは二機目だから弐号機でしょ?」
「でも、何か弐号ってヤラしくないですか? 愛人みたいで……」
「それも言わなきゃ気付かないわよ!……全く!」
「ヒナンゲリオン出撃します!」
「地点は?」
「にいがた競馬場! 特に目的はありませんっ!」
「分かってるわよ!……このまま活動限界まで独り身なのかしら……」
隊長の苦悩は続く……。
実は私は、たまに競馬場へ行く。
賭け事が好きな訳じゃないけど、レースを観たり、パドックを眺めたりするのが大好きなのだ。
ターフを駆ける馬の雄姿を肉眼で視たいんだ!
だから、TVじゃダメ。
ナマ馬たちを見て、
(=゜▽゜=)かっけー!
って言いたいっ!
そんな欲求を満たすために、愛車のルパン(中古の軽自動車)に乗り、競馬場にやって来た。
広い駐車場の片隅にルパンを止めて、颯爽と入場門をくぐる。
あ~馬のかほり……。
(´ρ`)くさっ!
そこはかとなく漂う馬のウ〇チの臭いが、鼻を殴り付けてくる。
今日もいいパンチしてんじゃねーか!(´〃`)
入ってすぐの所のパドック場に駆け寄る。
(=゜∀゜=)んまさんだ!
馬には、いろんな色の子がいる。
黒っぽい子、こげ茶の子にグレーっぽい子。
皆が可愛くてカッコいいのだ。
皆、いいケツしてんな!
(´∀`)いい意味で。
光を反射するツヤツヤとした毛並みもステキ!
(*´∀`*)うっとり…。
皆! ガンバれっ!
私は去っていく馬たちにエールを送った。
次はターフだ!
私は今の馬たちのレースを見るために踵を返す。
「ヒナコくん?」
ホワッ?(=゜□゜=)≡)
名前を呼ばれた気がして振り返ると、電信柱…じゃなくて、サカモトさんが幼女を連れて立っていた。
「サカモトさん!」
マズイ所を見られちまったぜ……。(((;゜∀゜)))
焦る私にサカモトさんが寄って来る。
「彼氏とデートかい?」
ヽ(≧д≦)/ぎゃーす!
サカモトさんの悪意なき鉄杭に心を抉られる。
「独りです……」
振り絞るように返事をすると、サカモトさんの傍らにいた美人さんが、
「あなた、お知り合いの方?」
「うん、ヒナコくん。会社の同僚」
その方はサカモトさんの奥方なんですか? モデルみたいな方が?
「はじめまして! ヒナコと申します」
私がご挨拶申し上げるとサカモト夫人は妖艶な笑みを浮かべて、私に挨拶を返してくれた。
隅に置けませんな!
このババチョップめ!
コノコノ~!(*`∀´)ゞ
サカモト夫人の美貌にも衝撃だったが、その幼女のあどけなさ!
(*´∀`*)天使や!
「お姉ちゃん! あーちゃんと遊ぼぅ!」
あーちゃん?
(≧∀≦)遊ぶ遊ぶ~!
「サカモトさん! あーちゃんと遊ばせてもらってもいいですか?」
私がサカモトさん夫妻にお願いすると、夫人は困惑しながら、
「でも……ご迷」
「いいえ! 私は馬を見に来ただけですから」
私は食い気味に一歩前に出る。
「あーちゃんも遊びたい~ぃ!」
「でもなぁ、アヤカ」
あーちゃんを宥めるサカモトさんに、私が必殺の一言をぶつける。
「サカモトさん。たまには夫婦水入らずで過ごされては如何ですか? 奥様との思い出のデート場所なんでしょ?」
夫婦で競馬場に来る場合は、過去にデートに来てる可能性が高い。
純潔のカウンセラーをナメるなよ?(`∀´)
「パパもママもお馬さんばっかり見てて、あーちゃんつまんない」
そうだろうそうだろう。
過去に何度かデートで来てる場合は、勝った経験が甦り、レースに集中してしまうものなのだよ。
「あーちゃんも遊びたいよねー?」
ここで愛娘の一撃を促す私。
父親は娘に弱いのだ。
「ねぇ~ぱ~ぱ~」
あーちゃんは、サカモトさんの手をブラブラさせて駄々をこねる。
「弱ったなぁ……」
サカモトさんが夫人に目を移した。
今やっ!(´∀+`)
「奥様、あーちゃんも遊びたい盛りですし、私も独りでいるより楽しいです。
私と番号交換してくだされば、迷子になっても安心ですよ!」
チョロいぜ……(´ー`)
サカモト夫人は私と番号交換してくださり、私はあーちゃんとデートだ!
癒されるぅ~(*´∀`*)
あーちゃんと私は、遊具のある場所へ向かった。
競馬場には家族連れも多く来るため、公園施設があるのだ。
カラフルな滑り台やアスレチックなものがある。
あーちゃんは私に手を振りながら、滑り台を滑り降りて来る。
あぁ……ママになった気分……(*´∀`*)
もうすぐお昼か。
こんなことなら、お弁当作ってくりゃ良かったぜ。
サカモトさん夫妻との約束の時間は午後5時。
最終レースまでやる気なんだな?
しかし、それまで私は夢の時間を味わえるっ!
サカモトさんはお昼代を私にくれようとしたけど、私は断った。
独身女の財力をナメテはいけない。
大体、私のお金であーちゃんにご馳走しなければ、私の幸せが半減するじゃないか!
やなこった!
(σ゜∀゜=)べーっ!
あーちゃんは元気に遊んでいる。
それを見守るママ気取りの私。
端から見たら親子に見えるかなぁ…(*´∀`*)
妄想が止まらない!
一頻り遊んだあーちゃんが、私の下へ駆けて来る。
私に飛び付いてくるあーちゃんを全身で受け止めると、あーちゃんはしっとり汗をかいていた。
「あーちゃん、おなかすいた!」
萌えー(@゜∀゜@)ーっ!
「じゃあ、お昼にしよっか? あーちゃんは何が食べたい?」
何でも申してみよ!
「あーちゃんはねー……とん汁っ!」
(゜∀゜;)えっ?
いや、あるけども!
確かに美味しいけども!
まさか、このエンジェルの口から『とん汁』というワードが飛び出すとは…。
「他には?」
「さんさいそばっ!」
シブい……しかも、汁物to汁物チョイス……。
この子は深いぜ……。
あーちゃんのリクエストは、店が違うので店をハシゴすることにする。
まずは『とん汁』から。
とん汁は屋内の簡易の店にある。
欲望が渦巻く屋内を歩きながら店を探す。
あーちゃんは私の手を引きながら前を歩く。
あーちゃんは店の場所を知ってるんだね。
そして、店でとん汁を二つ購入。
食べられる場所を探すが見つからない。
オロオロする私に、あーちゃんは、
「お外で食べよぅ!」
確かに、外のベンチなら食べ終えたオヤジ共が退くから座れる可能性は高い。
アヤカ……恐ろしい子!
(((;゜□゜)))ワナワナ
あーちゃんの狙い通り、ベンチをゲット!
二人で腰掛け、とん汁を食べる。
野菜の旨味の効いた美味なる汁に舌鼓を打つ。
「おいしーねぇ」
私の問い掛けに、あーちゃんは眉を顰めて、
「うーん……こないだの方がおいしかった」
( ̄□ ̄;)!!
海原先生かよ?
その年(5才)で微妙な違いが分かるなんて……。
「……そうなんだ」
返す言葉が見つからねぇよ……。( ゜д゜;)
とん汁をキレイに平らげたあーちゃんと、次の店へ向かう。
そばは入場門すぐの店で買える。
私は山菜そばと月見そばを購入。
あーちゃんと二人で食べ始める。
あーちゃんは器用に山菜をつまんでパクリ!
華麗な箸捌きに感心していると、あーちゃんは一生懸命にそばをふぅふぅしている。
キタ(=゜∀゜=)コレ!
幼児の『ふぅふぅ』は兵器だ!
幼児が熱い物をひたすら『ふぅふぅ』してるDVDがあったら買う!
あと、『もぐもぐ』も!
私はあーちゃんの食べ姿に見蕩れながら、そばを食す。
(*´∀`*)カワユイっ!
旨さが倍増ですなぁ!
そばを食べ終えて、一息つこうとベンチに座る。
「お姉ちゃん! 遊ぼうよ!」
あーちゃんがベンチから立ち上がって、おいでよポーズをする。
待ちたまえっ!
気持ちは分かるが、食後すぐに激しい運動をするのは危険だ!
「あーちゃん、お姉ちゃん疲れたから少しだけ休ませてくれると嬉しいな」
子供に禁止や抑制してはいけない。
抑圧された欲望は膨れ上がり、それが駄々になる。
ここはあーちゃんの良心に訴えかけるのだ。
「少し休んだら、いっぱい遊ぼうよ」
そして、その後の解放を約束する。
「分かった!」
ほらね(^∀^)~♪
「ありがとね」
私が頭を撫でると、ニコニコのあーちゃんは私の隣に座って足をプラプラさせている。
キャー(@゜∀゜@)ーー!
幼児の足プラプラは凶器だ!
身が保たねぇ……。
私があーちゃんの足プラプラを堪能していると、
「お姉ちゃん! あの子!」
あーちゃんがパドック場を指差す。
「あの子がいちばんになるんだよ!」
あーちゃんの指差すあの子って馬のことなのね。
「あーちゃん、分かるの?」
私が問い掛けると、あーちゃんは力強く頷く。
「うんっ! あーちゃんいつも馬さん見てるから」
サカモトさん一家が、割と頻繁に来てることに衝撃を受けていると、
「ホントだよ!」
そう言ってあーちゃんはパドック場へ駆けていく。
お待ちになって~!
(;´∀`)/
私も慌ててあーちゃんを追いかける。
あーちゃんは、おっさんたちの間をすり抜けて、パドック場の前へ歩み出る。
私も金欲にまみれたおっさんたちを掻き分け、あーちゃんに追いついた。
「あの子だよ!」
あーちゃんが指し示した子のゼッケンは3番。
確かに良い馬だ。
艶やかな毛並みに張りのある筋肉、そしてケツ!
「本当に良い馬だね」
私たちが話していると、後ろの小汚ないハンチングのおっさんが「ケッ!」と吐き捨てるように笑った。
オマエ……今、笑った?
ρ(#`д´)ゴルァ!
私の中の獣が牙を剥いたが、グッと堪える。
「お姉ちゃん、あーちゃんのこと信じてくれる?」
私を儚げに見上げるあーちゃんの顔に、キュンとなりながら笑顔を返す。
「もちろん!」
私が応えると、あーちゃんはパァッと輝く笑顔になって白い歯を見せた。
「お姉ちゃん! 行こっ!」
あーちゃんは私の手を引きながら、建物の中へ入っていく。
「何処へ行くの?」
私が問い掛けると、あーちゃんは振り向きながら、
「お姉ちゃんがあーちゃんを信じてくれるから、ばけんを買うの!」
「馬券?」
馬券とは、レースの着順を予想して金を稼ぐ悪魔の紙。正式名は勝馬投票券。
(ひな辞苑より)
馬券を買うための場所に連れて来られた私は、マークシートを一枚引き出し、バッグからボールペンを出して、印を付ける。
あーちゃんが見ている手前、買わない訳には行かない……。
これは信頼を買うのだ。
私とあーちゃんの友情の証!
私は印を付けた。
一着3番……500円。
これがあーちゃんと私の友情の証になるのだ。
発券機で馬券に変え、ターフへ急ぐ。
抜けるような青空の下、鮮やかなターフの芝の緑、そして仄かに香るウ〇チの臭い。
先程の若駒たちがゲートに着く。
刹那の沈黙の後、ゲートが一斉に開く。
パカンッ!
颯爽と駆け出す馬たちの躍動に目を奪われ、思わずあーちゃんの手を握る手にも力が入る。
私たちの応援する馬は、全8頭中5番目あたりにいる。
私の目には3番の馬しか見えない。
最後のカーブを曲がり、ラストの直線に入ると、3番の馬がジワジワと前へとやって来る!
ρ(#`∀´)/行けーっ!
そのまま3番が一等賞でゴールイン!
初めて当たった……。
ポケー(@゜∀゜@)ー…。
「ほらねっ!」
得意気なあーちゃんに、私は興奮が治まらない。
500円が1万円くらいに変わった。
これは麻薬や!
気を良くしたあーちゃんの天才的な直感に従い、馬券を買い続ける私。
いくつかは外れたけど、終始はプラスの大勝利!
私はあーちゃんへのお礼として、グッズショップに立ち寄って、馬のデカいヌイグルミを2つ購入し、お揃いに持ち合う。
サカモト夫人は、とても恐縮していたが案ずるな。
もう充分に頂いている。
お釣りが来るほどに。
最高の1日をありがとうね!
あーちゃん!
(*´∀`*)ノ