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秋の話  作者: ¡no pasarán
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小さな灯り

 ガラスの中で、小さな灯火が揺れている。

 灯りが揺れて消え入りそうになる度、それを見つめる少女の姿が明滅する。

 落ち葉の山の小さな小屋には、オイルランタン以外に灯りがない。だから少女は半ば懇願するように見つめていた。

 ──あともう少し、もう少しで帰って来る。

 待っている相手は、とても親しい友だ。また先輩のようなものでもあって、年は殆ど同じでも、何時も頼ってばかり。だからこういう小屋で、しかも彼女がいないとなれば落ち着かない。

 少女はずっと灯りを見つめていた。そして火の穂が揺れる度、一段々々眠りへの階段を下っていった。


 階段の先で、少女は地の上を這い回っていた。ダンゴムシ程足は多くなく、ミミズ程体は長くない。全身毛に覆われていて、尻尾が時折地面を打った。目の前にある三本ずつの線は、髭らしい。

 ──ネズミ嫌い。

 少女はそう言ったつもりでも、実際はネズミの鋭い鳴き声に変わっていた。そしてしばらく這い回って、とてもおいしい匂いに引き寄せられていった。でこぼこの地面を登り降りしていると、広い溝に行き当たった。少女はまるで生まれながらのネズミのように、斜面に並んだ木の板に足を引っ掛け、器用に降りていった。

 一旦平らな場所に出ると、底の方に溜まっていた──みずみずしい錆──の臭いが鼻を刺した。それでもネズミ、おいしい匂いは嗅ぎ分けて先へ進む。溝の底を壁伝いに一曲がり二曲がり、匂いがどんどん濃くなる。そこで、あまり良くない目で匂いのする方を確かめてみると、壁に開いた大きな穴があった。

 穴の淵へ這い寄って、そこから中を確かめる。下へ降りる階段。先は暗くて見えない。

 ──暗いの嫌い。

 ネズミは高く鳴いた。それでもおいしい匂いに惹きつけられ、階段を一段々々降りていく。誰かがマッチを擦った。明るくなった先に、見たことのない男の顔があって、でも何処か幼かった。



   小さな灯り―おわり

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