表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋の話  作者: ¡no pasarán
1/21

落ち葉の原

「落ち葉は何処から来るのだろうね」

 朱落葉(カエデ)は落ち葉の山を突きながら呟いた。

「そりゃもちろん、木の枝から落ちるんだよ」

 桑芥子(フーサン)が竹ぼうきで木の方を示した。


 二人の遥か頭上には巨大な木の枝があって、遠く霞んでいた。枝の向こうには雲のように濃い霧が漂って空を遮り、陽光も辛うじて地上に辿りつくくらいだ。

「春は遠いね」

 朱落葉が落ち葉の山を蹴飛ばした。

「先に冬が来るよ」

 桑芥子は眉間にしわを寄せ、意地悪そうに言う。


 落ち葉は積もる。巨大な木からは巨大な枝が伸び、何千何万という分枝から数え切れない枯れ葉が降る。ミミズも、ダンゴムシも等しく大きく、食べる量も多い。それに比べて、この二人はあまりにも、豆粒の様に小さい。

 落ち葉の谷を潜り抜けて丘を越え、まだ新しく乾いた落ち葉を集めては持ち帰る。落ちて日の経った枯れ葉は水を吸って重く、オート三輪でも運ぶのに苦労する。

「もう入り切らないね」

 肩幅程もある大きな手箕(てみ)を抱え、朱落葉がため息を吐いた。オート三輪の荷台には鉄網(てつもう)が填め込まれ、ここにうず高く盛って帰る。

「運転する?」

 桑芥子は竹ぼうきを荷台に差し込み、ゴーグルを揺り示した。僅かな陽光が朱く反射する。朱落葉はそれに答えず、荷台の蓋を手荒く閉め、伏せ目がちにバックシートへ跨った。

 調子を崩され、また少し後悔しているのか、桑芥子は戸惑いを隠そうと大げさに手を擦り合わせつつ「寒いね」と口に出した。そうして同じくドライバーシートに跨り、始動スイッチを押した。

 二人と落ち葉を乗せたオート三輪は、調子の悪い雄鶏のように何度か唸った後、一瞬静かに、そして突然朝が来たかのように雄叫びを上げた。朱落葉は何時だって、これを怖がって桑芥子のわき腹を引き絞るのだった。


                                     落ち葉の原-おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ