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夢でまた逢いましょう

作者: 吉成 けい

 彼は私のおでこにキスをし、そのままバイクで走り去っていった。彼の生きている姿を見たのはそれが最後であった。アルバイト先に向かっていた彼は信号を無視した車とぶつかりそのまま帰らぬ人となった。

 不思議と涙はでなかった。きっと彼と過ごした日々が充実していたからだろう。この先もっと楽しいこともあったのだろうと思うけど、だからといって彼の両親や妹のように泣き散らかす気にはなれなかった。受験生なのにアルバイトなんかしてるから罰が当たったんだと誰かが言った。それはあながち間違いでもなかったのだろう。

 私の青春は彼のお葬式で終わった。


 あれから三年。都内の大学に通っていた私はある晩奇妙な夢をみた。甘酸っぱいような悲しいような高校生の思い出。私のおでこにキスをしバイクで走り去って行った彼が夢にでてきたのだ。あの日と同じように走り去っていくのだが、途中で折り返してこちらに帰ってくる。そして私の前に止まると一言、なんで止めてくれなかったんだというとまた私のおでこにキスをし走り去っていく。これがループし永遠と繰り返さる。特別不快な夢でもなかったのだが、目を覚ました私は毛穴という毛穴が開き、汗が噴き出していることに気が付いた。身体としては悪夢だったのだろう。

 それからというと、毎晩その夢を見るようになった。一週間した時点で思った、うざい。私は試しに彼に手紙を書いた。もう夢に出てこないでください。その手紙を枕の下に置き眠ったところ、なんと夢を見なくなったのだ。もしかしてと思い、次の日も手紙を書いた。


 お腹空きますか?


 夢は復活しずっとループするのだけど、彼は「腹減った」とだけ言うようになった。これは面白い。夢で死人と喋れるなんて面白すぎる!それから毎晩私は寝る前に手紙を書いた。


 そちらは暖かいですか?

 可愛い子はいますか?

 バイクは乗っていますか?


 返事も返ってきた。


 過ごしやすいよ。

 お前が一番可愛い。

 ずっと乗ってるよ。


 すっかり亡き彼との夢の中のデートが楽しくなった私はついにずっと聞きたかったことを聞いた。


 私ともっと一緒にいたかった?




 あれから三年。これからママに会いに行く。私の日記を読んでいるからきっとわかるだろう。上手くこちらに連れてこれるといいのだが。知り合いが元彼だけとか淋しすぎるからね。

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