姉としての気持ち
柚姫本人は明るく振舞っているけれど、心の中ではかなり混乱していると思う。
今まで仲良くしていた友達には他人のフリをしなければならないし、性別が変わったんだから生活も変わってくる。
心と身体が曖昧な状況だし、恋愛だって難しいと思うのよ。
でも、私にできることはとにかく明るく、姉として柚姫に接することだけ。
「姉ちゃん姉ちゃん!」
「んー?」
「次はどこ行くの?」
「なんか欲しいものとかないの?」
「待ってて! 案内図見てくるから!」
後ろ姿にも柚春の雰囲気はない。
足は内股になってるし、走ってる時の手の動かし方も随分可愛らしい。
「他人から見れば、普通の女の子なのに……」
私もあの子が女体化した経緯については知らない。
これも運命だったのよ。きっとそう。
同性だからこそ共有できる情報もある。
同性だからこそ教えることができることもある。
「おーい、姉ちゃん?」
「お、早かったわね! いい店あった?」
「いやー別になかったー。」
「そか。じゃあ帰ろうか!」
今は口調がよそ行きになっている。
本人曰く「女の見た目で男口調は変」だそうだ。
精神的な部分に男が残ってはいる。
でも、それも時間の問題で、完全に女子化してしまったときはどうなるのだろうか。
全ては運命に従っている。そう信じたい。