さっそくの試練
「ねぇねぇ、柚姫!」
「ん? どうしたの?」
話しかけてきたのは白田 恵。
クラスの中心に立つ、委員長タイプの女子生徒だ。
自己紹介の際「名前で呼んで下さい」と言ったので、それを実行してくれているのだ。
「柚姫って、転校した霜北の親戚とか?」
「違う違う。そんな人……知らないよ?」
「そうなんだ。ごめんね、変なこと聞いて。」
「全然大丈夫だよ! 気にしないで!」
「じゃあ、行こっか!」
「行くって……どこに?」
「次の授業、体育だから一組で着替え!」
一番まずい状況だ。
見た目は紛れもなく女子だけど、精神的には妄想力育む中二男子。女子と着替えなんて、一番ダメなやつだよ!
ここは……演技だ! 演技で乗り切ろう!
どうせドッジボールとかだろ?体操服忘れたって言い訳で乗り切ろう!
「恵? 一つ聞いていい?」
「なになにー? じゃんじゃん聞いて!」
「今、体育って何やってるの?」
「プールだけど?」
待て待て待て。一回落ち着こう。
プーなんたらって聞こえたんだけど、多分聞き間違いだよな。
「今、なんて言った?」
「だーかーらー、プールよプール!」
ドッジボール→体操服に着替え(×)
プール→スクール水着に着替え(⚪︎)
よって、一時裸になる必要有り。
本格的に死んだかもな、俺。
半ば強制的に一組へと連行された。
一組の教室には女子特有の甘い香りが広がっており、一瞬で俺は夢心地となった。
「ふんふーん♪ 柚姫、着替えないの?」
「えー、あのー……」
恵を始めとした二クラスの女子、総勢30名が一斉にタオルで身を隠して着替えを始めていた。
が、中にはタオルで身を包まない奴もおり、俺にとってはかなり毒な光景だ。
だからといってもじもじ恥ずかしがっていたら怪しまれることに間違いはない。
「さ、さぁ、着替えよぉ〜!」
「着替えよぉ〜♪」