物語の終結と別れ
「柚春ー、そろそろ行くわよー!」
「おう……」
俺はすー、はー、と大きな深呼吸をする。
この国の空気を吸うのも最後だ。
俺と姉ちゃんは、親が働いているアメリカへと発つことになった。
前々から声はかかっていたようで、死んだことになっている俺が、また学校に現れるのも問題。簡単に引っ越しできるほど、金銭的に余裕もない。そこで姉ちゃんがアメリカ行きを決意したようだった。
「やっぱりあんたは柚春じゃないとね。」
「んだよ。柚姫たんかわゆいー! とか言ってたくせに、よく言うよ。」
人波に混じり、俺たちは飛行機に向かって歩き出す。
そのとき、後ろから声がかかった。
「「「「霜北ー!!!!」」」」
寄土、恵、ほたる、日尾。
四人にはかなりお世話になった。だから、全ての事実を伝えたんだ。誰も俺を責めることはなく、事実を事実として受け入れてくれた。
「霜北! またいつか会おう! 絶対だぞ!」
「もちろんだ!」
「霜北くん。私、あなたを忘れない!
霜北くんとの思い出も、柚姫との思い出も、大切に、大切にするよ。」
「ありがとう。俺も忘れないよ!」
「霜北。女装とかしちゃだめだよ。」
「……しないよ? うん。」
「霜北! 私と友達になってくれてありがとう。それだけ。」
「こちらこそだ。これからもよろしく頼む。」
「じゃあ、行ってくるよ!」
寄土と恵は二人肩を並べて笑っていた。
これからも上手くやれよ。応援してるからな。
ほたるは相変わらず、かき氷を食べている。
食べ過ぎで太るなよ。身体を大事にな。
日尾はにこりと微笑んで手を振っていた。
悪いフリをするのはやめとけよ。お前は普通に、真っ当に生きている姿が魅力的だよ。
こんなときぐらい泣いてもいいだろ?
みんなにはみんなの、俺には俺の生活がある。
俺は一時、男と女の狭間に生きていた。
男も女も変わらない。
友達、心の許せる人がいるから頑張れるんだ。
地球はいつも変わらずに廻る。
二つの性の間は、紙一重。
気持ち次第でどうとでもなる、微々たる違いだ。




