恋する乙女よ
「ねぇねぇねぇねぇ!」
「なになになになに!」
俺の胸ぐらを掴んで激しく前後に揺らす恵。
顔を真っ赤にして、怒っているのかと思いきや、微妙ににやけている。
「あれは教室で言っちゃだめなやつだよ!
寄土くんに聞かれちゃったかも……。どうしよー!」
「ごめんごめん!」
あいつ、空気が読めない上に天然だからなぁ。
聞かれたってことは絶対にない!
……なんて、本人には言えないよな。
今、俺たち二人は放課後の教室にいる。
姉ちゃんは大学の友達とでかけるやらなんやら。おそらく、夜ご飯は一人で食べることになると思われます。
だから、二人で話しているというわけさ。
「霜北さんと白田さん。戸締りお願いね!」
「はーい。」「了解でーす!」
先生が遠ざかるのを確認するついでに鍵を取り、指で回しながら恵に話しかける。
「でさー、どういうとこが好きなの?」
「ばっ……! いきなり聞かないでよー!」
照れまくりですやん。
……ん?そういえば、寄土が俺のことを可愛いって言ったことについては何も言ってこないな。
白くなってるうちに少し前の記憶を消したのかな?どういう理屈なんだろう。謎だ。
「あ、恵こっち来て。」
「なにー?」
「ほら、あそこあそこ!」
グラウンドに面している俺たちの教室からは、放課後クラブに励む運動部が見える。
一番校舎に近い区画でラケットを振るうのが寄土が所属するテニス部だ。
「かっこいいなぁ……」
頬杖をついて、うっとりとテニス部(寄土)を眺める一人の恋する乙女。
花咲くピンクの空気を放っている。
「寄土、多分好きな人いないと思うよ。」
「なんでそう思うの?」
「ふっふっふ。女のカンよ♪
あ、不安なら恋愛相談に乗ってくれそうな子がいるよ。まぁ恵も知ってる人だけどね……」
「本当!?」
「うん。対価は高くつくかも……。金銭的なものじゃないけど。」
恵のためだから仕方ないけど、できれば発信したくない電話番号に電話をかけた。




