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俺と私は紙一重  作者: ねむ44
2/23

転入。

翌日の朝。俺は姿見の前で絶叫していた。


「うぎゃー! かぁわぁいぃー!」

「……想像以上ね! あんた、もともと女顔だったし、素質はあったんじゃない?」

「な、なんだか複雑な気持ちだよ……」


鏡の向こう側で俺であって俺ではない美少女がセーラー服を着て微笑んでいる。黒髪の俺が着ると、よく映えるな。


「まず、足は内股ね。」

「こっ、こうか?」


内股にしてみる。骨盤のあたりが痛い。


「そうそう。 で? 座るときは?」

「座る? 座るのはこうだろ?」


近くにあった椅子に腰を落とす。

座るって、こうするしかないと思うんだけど。


「はいブー! その座り方はNGよ!」

「なんで?」

「スカートが捲れて下着が見える場合があるの!」

「別に良くね?」

「ダメに決まってんでしょ!?」

「つーかさ、さっきから思ってたんだけどよ……」

「なによ?」

「スカート短くね?」

「私のなんだから当たり前でしょ?

短い方が可愛いし。めっちゃ似合ってるし。」


スカート丈、膝上15cm程度。

少しの風でも下着が見えてしまう程の短さのスカートを着せておいて、下着が見える云々。

かなり理不尽じゃないだろうか?


「あ、時間! 学校行くよ!」

「ちょっ、おい!」




「心配しなくても大丈夫よ!

この学校は、いい子ばっかりだから。すぐに馴染めると思いますよ。」


よりにもよって2-2。柚春のときと同じクラスに転入することになってしまった。

いい子ばっかりなのはよく知ってますよ。


「こちら、担任の明池(あけち)先生です。」


校長先生が隣に座っている女性を示す。


「えーと、霜北 柚姫さん……!?」

「ど、どうかしましたか?」

「いやいや。転校した生徒と名前が似ていたものですから、つい驚いてしまって。」

「そうなんですか。」


なんで一文字しか変えてないんだよ!

普通、疑われるに決まってんじゃんか!


「じゃあ、教室へ向かいましょうか。」




歩き慣れた廊下を歩いているはずなのに、とても新鮮な気持ちだった。

男から女になったんだ。見える世界ももちろん違うだろう。


「……着いちゃった。」

「ええ。ここが2ー2の教室。

生徒に少し話してくるわ。待ってて。」


先生は教室内で、転入生が来たことを話しているようだった。

見た目はともかく、中身は昨日までもこの学校、この教室に通っていた霜北 柚春だ。

緊張なんて全くしない……はずだった。


「入ってきて。」


先生に促され、俺は教室に足を踏み入れる。

同時に教室の張り詰めた空気が吹き飛び、一気に騒がしくなる。


「私の名前は、霜北 柚姫です。

これから、このクラスの一員として仲良くしてもらえたら嬉しいです! お願いします!」


拍手。女子からの可愛いという声。男子からの希望に満ちた声援。

教室を端から見渡してゆく。

全てよく見知った顔だったが、とある一点で俺は停止した。


「柚……?」


中央、一番後ろの席に座っている男子生徒。

そいつは目を見開いて薄く涙を浮かべていた。


寄土 博詩と、目を合わせてしまった。

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