ふらり
ふと振り返ると恵が下を向いて立ち尽くしていた。周りにほたる達の姿は無く、完全に一人になってしまっていた。
「霜北どうし……白田、一人きりなのか?」
「みたい。ちょっと待っててね。」
俺は恵のほうに走る。
ビーチサンダルを履いているため、かなり走りにくく、本来のスピードが出ない。
「恵!」
呼びかけても返事がない。
「どうしたの恵? めぐ……」
ふらっ……どさり。
恵は力なくその場に倒れ込んだ。
「恵! しっかりして! ねぇ!」
俺たちの様子を見ていたであろう寄土が駆け寄ってきて、恵を抱え上げる。
「何にせよ、一旦休めるところまで運ばなきゃいけないだろ? ここからなら……近くに救護室がある。」
「寄土は恵をお願い。私はほたる達を探す!」
秒針が動く音だけが冷房の効いた救護室に異様なほど響いているように感じる。
「大丈夫。彼女、太陽の熱にやられたのよ。
普段から太陽の光、浴び慣れてないのかもね。」
「うぅ……。」
「……もきゅもきゅ。」
『すごーい! 私、ここの存在は知っていたけど始めて来たのー!』
よく考えてみろよ。
この辺りは海からは遠いし、プールもここ一つしかないじゃないか。
恵は、プールなんて初めてだったんだ。
寄土たち三人はこの部屋には入ってこない。
女子が休んでいる部屋に入るのはダメだという男子なりの気遣いなのだろう。
「ん……」
「「恵!」」
「あれ? 私……ここはどこ?」
「ここは救護室だよ。
恵、さっきいきなり倒れて……、寄土が抱えて運んでくれたんだよ。」
「そうなの……。って、え!? 寄土が!?」
「う、うん。寄土。」
なんだ。元気そうでよかった。
「白田、大丈夫か?」
「あっ、ありがとう寄土……」
「どうした? 顔が真っ赤だぞ?」
「大丈夫! 何でもないから!」
「そうか。ならいいよ。霜北。」
恵の声が聞こえたのか、寄土が部屋に入ってきた。そして、このタイミングで俺に話を振ると言うことは……
「今日はもう帰ろうか。身体を壊しちゃ、元も子もないからね。」
「えっ……でも……」
「白田、次はクーラーの効いてるショッピングモールにでも行こうよ。」
「うんっ!」
夜、11時30分。
寝ようとしていたら、枕元で携帯が震えた。
『差出人:恵
今日は迷惑かけてごめんね。
プールなんて行ったこと無くって、直接太陽の光を浴びるなんてこと、ほとんど初めてだったの。ちょっと悩んだりしたし、寝不足だったのもあって、倒れちゃった(/ _ ; )
寄土くんも誘ってくれたし、次はショッピングモールで遊ぼ(*^^*)
じゃあ、おやすみなさい。』
「ふっ、いちいち律儀なやつだな……」
『迷惑なんかじゃないよ!
私もほとんど初めてだったしヽ(´o`;
これから、みんなで思い出つくろ(* ̄∇ ̄)
また明日。おやすみなさい。』
簡単に返信をして、俺は目を閉じた。




