誘い
「恵〜〜〜っ♪」
「わっ、どうしたの柚姫?」
俺は恵の胸に飛び込む。
今では煩悩を殺し、ハグをするぐらいはできるようになっていた(もちろん女子に対して)。
「身体、大丈夫?」
「へーきへーき、このとーり!」
恵は手を腰に当てて胸を張る。
背景に『デーン!』みたいな感じの文字が見えそうだ。
「むー」
隣から視線を感じたので振り向くと、そこには『私の相手をしろ』と言わんばかりの表情のほたる。
「……レズ?」
「違うわっ!」
廊下から走るような足音が聞こえたと思ったら、すぐに奴が現れた。
「レズ!? レズって言わなかった!?」
顔を真っ赤にして鼻息を荒げる日尾。
「ほたる。逃げるよ。」
「うー、らじゃー。」
「え? え? なにこの状況!?」
あわあわしていた恵の手を引き、日尾が現れた前の扉を避け、後ろの扉から三人同時に廊下に飛び出す。
「あっ、待ちなさーい!」
「誰が待つか! 来るなー!」
やばい。日尾は走るのが異常なほど速いんだった。これは早いとこどこかに隠れないと!
「ほた……恵!」
「はい!」
「おい。なんで私を呼ぼうとしたのに恵ちゃんに変えた? おーい?」
だって、ほたるに言ったら「購買」としか答えねぇんだもん。
「どこか隠れられるところある?」
「んー、裏庭とかはどう?」
「了解! 裏庭目指して走れー!」
道中、先生に「走るなー」と言われたけど、走らなければ心に深い傷を負うことになる気がするから走るよ。
「ここまで来れば大丈夫かな。」
「柚姫? なんで日尾さんから逃げたの?」
「あいつ、腐ってるから。」
「あいつ、腐ってるから。」
「いや、二人で言わなくても……」
だって腐ってるから。うん。
「あっ……」
ベンチに腰掛ける男子生徒と目が合った。あれは……、寄土だな。
寄土は立ち上がってこちらに歩いてきた。
「やあ。三人してどうしたの?」
「寄土は何してたの?」
「考え事してたんだよ。」
「考え事?」
「うん。明日から三連休だろ?
だから、どっか遊びに行きたいなと思ってるんだよ。プールとか。一緒に行かないか?」
「「「え?」」」




