まさかの〝あれ〟
「私は私じゃない。俺なんだ。」
「……ど、ど、どういう意味?」
「俺は霜北 柚姫としての姿になってしまっているんだよ。中身はそっくりそのまま霜北 柚春なんだ。」
あーあ、言っちゃった。
でも、秘密を打ち明けたことで少しは楽になった気がする。ここで日尾に何を言われようと正面から受け止めてやるよ。
「霜北……」
顔を赤らめて身体を小刻みに震わせる日尾。
怒りの感情。男子である俺が女子と同じ部屋で着替えていたという『変態』のレッテルを貼られても言い返すことが不可能な、紛れもない事実に対して、日尾はどのような感情を抱くのだろうか……。
「萌えるっ! 萌えるわよ!」
「……は?」
「まさか柚姫〝ちゃん〟が俺っ娘だったなんて!
わざわざ霜北の名前まで出して言い訳しなくても大丈夫よ!? 私、そういう娘が好……全然気にしないタイプだから!」
ふんふんと鼻息を荒げる日尾。
まさか。まさかのまさか。
「日尾って……もしかして……?」
「私、腐ってるわよ。」
「はいさよならー!」
俺はその場から逃げ出した。
無理無理無理!変な勘違いされた上にまさかの日尾が腐女子だったことを発覚させちまった!
あーあ。せっかく秘密を明かしたのに、秘密でもなんでもない、ただの勘違いから『変態』のレッテルではなく『俺っ娘』のレッテルを貼られてしまうという緊急事態だ。
「狙った獲物は逃さない!」
「ぎゃーーっ! 来ないで〜っ!」
なかなか入り組んだ細い路地を逃げたんだけどなー。なんか走るの速いし、おまけに手が怪しく『わきわき』と動いて……もとい蠢いている。
「げっ……!」
これはあれだ。行き止まりだ。
「捕獲、完了。」
この後、どうなったかは言うまでもない。
ちなみに友達になってほしいって頼みは全力で取り消しました。




