バーサスっ♪
「柚姫。日尾は……日尾だけは敵にまわさないほうがいい。あいつと敵対した子たちの最後はみんな同じ。ショックで不登校になってる。」
下足室前の廊下でほたるに呼び止められた。
日尾が危ない奴だってことは見ててわかるけど、俺はそれを上回るほどの情報を知っている。もちろん、男の頃に収集した。
「大丈夫だよ。私はあんな奴に負けないから。」
「でも…………!」
「私はあいつの性格を叩き直す!
んで、ほたるも日尾の呪縛から解き放って、あいつと友達になるって決めた!」
「危ないよ!」
「大丈夫だって言ってんだろ。俺は人間が生む『格差』が大嫌いなんだよ。みんなが平等に生活できる環境をつくる。だから、ほたるは少しの間待ってて。」
俺は胸を張って歩く。
日尾 紗夜。あいつには絶対に負けない。
「柚姫、俺って言った……よね。」
日尾に指定されたのは、学校からほど近い公園だった。小さなブランコがあるだけの簡素で人気の少ない公園だ。
「へぇ。本当に来たんだ。」
じわりじわりと俺に歩み寄る。
「呼んだのはあなたでしょ?
またまた、二人も子分引き連れたりして。どれだけ自分に自信がないのよ。」
俺の前まで到達し、拳を振り下ろす。
「また暴力。殴ったら終わると思ってる?」
寄土と同じモーションで腕を掴む。
そのまま強く握ってゆくと、少し日尾が顔を歪めた。
「日尾。暴力はやめろよな!
それと化粧も。お前は化粧なんかしなくても十分可愛いと思うぞ。」
「……!?」
あー恥ずかしい!これは、俺が俺だった頃、日尾が女子と喧嘩しているときに俺が日尾に言った言葉だ。何気なく『可愛い』と言ってしまったという、俺史上最大の黒歴史。
日尾は頬を真っ赤に染めて拳を解いた。
同時に腕を解放してやる。
日尾は霜北 柚春のことが好きだった。らしい。
いやいやいや、自慢とかじゃないからな!?
それで、しばらくは化粧も落とし、暴力も振るわずに静かな恋する乙女だった。
だが、柚春が転校……まぁ俺の意識はここにあるんだけども一応転校したってことで。
転校してしまって、再びグレたって感じだ。
「あんた、それどこで知ったの?!
答えなさい言いなさい白状しなさい!」
「日尾。」
「なっ、なによ!」
「私は今から秘密を言う。だから、お前もそんな悪ぶるのやめて。私と、友達になって。」
「……言ってみなさい。」
俺は、小さく口を開いた。




