(66) 梅雨[つゆ]モドキ
モドキとは似てはいるが、非なるもの…の意である。
古山は降りそうで一向に降らない梅雨空をジィ~と見上げながら、梅雨モドキだな…と思った。
ようやく梅雨入りしたのは数日前だったが、そのときに申し訳ない程度に降って以降、降雨はなかった。冷静に考えれば、こういう空梅雨の年もあったから、これもアリか…とも思えた。ただ、過去の流れでは、梅雨はジトジトと降り続く・・としたものだった。その兆しも今年はなかった。そうはいえ、降るところは集中豪雨で降っているのである。
夜の天気予報で綺麗どころの美人予報士が、「○○地方は梅雨入りしたとみられます」…とか言っていたことを古山は思い出した。そのときは、予報士の衣装を見ながら、今日も違うが、綺麗だな…と、天気以外のことを考えていた古山だった。昼の年老いたニコニコ顔の男性予報士は民放だったが、アレはアレで愛想がよく、また別の意味で結構なことだ…と思いながら、そのときも肝心の天気を聞き逃した古山だった。今は、そんなことはどうでもいいのである。ようやく畑野菜の水やりから解放された古山としては、梅雨入りしたとみられる・・では今一、インパクト不足で困るのだ。ここは、はっきりと梅雨入りしました! と、断言して欲しかった。だが、今の空の感じでは、それも無理か…とも思えた。
結局、その日も曇ったまま、雨は一滴も降らなかった。降らなければ畑は乾くから水やりの必要・・となる。誰が? と考えれば、古山以外にはいない。そういや、エルニー二ョが、どうのこうのとも言っていたぞ…と、つまらないことをこのタイミングで古山は思い出した。古山は先をネガティブに見据え、深い溜め息を一つ漏らした。予想結果は梅雨モドキではなく、はずれモドキだった。
完




