(6) 僕は何?
精一杯を生きよう! とは、卒業記念に担任の室月先生が僕達に残した言葉でした。先生は理論家で、黒板へ図式を書いてそのことを説明しました。それは、次のような図式でした。
生まれ落ちた星の下
↓ ↓
ハズレ 当たり
ハズレの場合 当たりの場合
↓ ↓ ↓ ↓
大ハズレ おしいハズレ まあ、当たり 大当たり
○大ハズレ =生まれ落ちたのが不思議なほどの大ハズレ
生まれられたことに感謝し、奇跡を起こすく
らい精一杯生きれば、当たりへと変化する可
能性を残すハズレ
○おしいハズレ=当たらなかったが、それなりに当たりに近
い残念なハズレ
当たった人を妬まず、ハズレたことに落ち込ま
ず、コツコツ努力すれば当たりへと変化する可
能性を残すハズレ
○まあ、当たり=かろうじて当たったのだから、当たったこと
を自慢するほどのことでもない努力を必要
とする当たり
○大当たり =完全な当たりだが、馬鹿当たりとも言える
危険を孕んだ当たり
この図式を示しながら室月先生はお話をしました。結果として、君達は精一杯生きよう! と結論づけられました。小むずかしい話は分かりませんでしたが、生まれ方というのは籤運に似てるなあ…と思えました。
帰って、僕は何? かを考えました。父さんは、それなりのサラリーマンです。母さんもそれなりの普通の主婦です。ですから、先生の話によるところの、まあ、当たりくらいか…と思え、ひとりニヤリと笑いました。食事中でしたから、母さんが、「なによ・・おかしい子ねえ」と言って訝しげに僕を見ました。僕は考えるのをやめて食べ終えました。子供部屋へ戻ってふたたび考えました。二人はそれなりの親なのですから、やはり僕もそれなりの普通の子供なんだ…と思えました。期待されるほどの子供ではありませんが、落ち込まれるほどの出来の悪い子供でもないんだ…と思えました。先生に言われた最後の宿題でしたから、そのことをノートに書き終えました。これで安心して冷蔵庫にあるドーナツを美味しいミルクコーヒーで食べらるのか…と思うと、えも言えぬ幸せ感を僕は覚えました。
完




