(58) 予報
飽くまでも予報であり、外れることも、ままある。それが天気予報というものだ。
━ え~~移動性高気圧は通過しまして、日本海へと低気圧が近づいて参ります。ですから、明日は九州方面から下り坂となるでしょう。所によっては降り出すところも出て参ります ━
天気予報を語る中年の気象予報官が明るい笑顔で言っている。ほう、そうかい…という気分で津山はテレビ画面に釘づけになっていた。こりゃ、明日はゴルフコンペはやめたほうがいいな・・と消極的な発想が瞬間、津山を襲った。
翌朝である。空は快晴で絶好の行楽日和となっていた。起きたのは、昨日の発想の続きで少し飲んだから、九時半ばはすでに回っていた。津山は、しまった! と思った。時すでに遅し・・とは、まさにこれである。腹立たしい気分で温めたミルクをガブッ! と、ひと飲みし、ガーリックトーストを齧った。テーブル上の朝刊を手にして適当にめくった。いつも見る運勢欄に津山の目はいった。
『なになに…。行動は自らの判断に従え。他人の言を信じるな、か…』
津山はガラス窓に映る青空を眺め、当たってるぞ…と思った。
午前中、こんな日和に掃除かい…と不満に思いながらも、津山は妻に言われた部屋掃除を片づけた。妻の落雷はコリゴリの津山なのだ。
昼は妻の手料理で満足した津山がベランダへ出てゴルフのクラブを磨いていると空が急に雲で覆われた。津山がおやっ? と空を見上げたとき、パラパラと雨滴が落ちだした。そして、次の瞬間、ザァ~! と俄かに大粒の雨で本降りとなった。こりゃ、やっぱり出なくてよかったぞ…と、津山は退避した窓ガラス沿いの椅子に座って思った。妻がシナモンティーと茶菓子を運んできた。
「出かけなくてよかったわね…」
「ああ。当たるも八卦、当たらぬも八卦か。この予報は当たったような当たってないような…」
「なに、それ?」
「いや、なんでもないさ…」
ははは…と暈して笑い、津山は思った。天気予報と八卦は、ある意味、予報で共通した認識だ。確率は相当、天気予報の方が高いが…と。
津山がそう思った瞬間、雨は急に上がり、快晴となった。津山は呆然と氷のように立ち尽くした。
THE END




