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(48) 食に拘[こだわ]る男

 父の代に創業した町工場を引き継いだ大山だったが、世間からは変人と言われ続けてきた。根っからの美食思考家で、あの有名な北大路魯山人をもしのぐのでは…と世間に名をせたこともあった。その彼が鉄屑てつくずおもむろに新作の機器マシーンの中へ入れた。この機器は今世紀最大の発明・・と自負する分子変換装置である。詳しく言えば、ありとあらゆる物質を食品へ変換できる装置だった。苦節22年、大山は完成したこの装置を前に万感、迫るものがあった。そして、指がその装置の駆動ボタンを押したとき、彼の頬にひと筋の涙が伝った。

 鉄屑が食品に? えっ!? 何かの聞き違いだろ…? と、最初、人々は自分の耳を疑った。大山の言葉が本心だと分かったとき、人々は下手な冗談ジョークを言う奴だ、と彼を嘲笑ちょうしょうした。そしてついには、こいつは変人だな…と、彼を避けるようになった。工場を閉鎖し、機器製作に没入し21年が過ぎ、やがて22年目が半ば去ろうとしていた。

 ランプの点滅が消え、機器の微動が停止した。大山は静かに機器の出入扉を開いた。そして、白手袋の手で中に入れた容器を取り出した。な、なんと! その容器の中には、ふっくらとした美味そうな食パンが出来上っているではないか…。彼は、それを見ながら静かに笑みを浮かべた。TPP体制崩壊以降、世界各国は自国防衛のため食糧ブロックの経済体制を敷いていた。どこの国からも輸入はままならなかった。そんな食糧危機におちいった日本を救える…と大山は確信した。

 それから半年が経過したとき、世界各国の食糧危機は回避されていた。特にアフリカ諸国はその傾向が顕著けんちょであった。大山は変人ではなく、英雄としてその名をとどろかせた。やがて彼はノーベル賞を授与され、その功績を世界から認められたのである。


                  完

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