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(37) 無駄のない動き

 人は動物だから動く。植物だって少しずつだが動いている。要は、生物は皆、動く訳だ。ただ、人間はその動き方が緻密ちみつなのである。これは、よく言った場合のたとえである。悪く言えばズルがしこい生物…となる。その人間にも幾つものランクがある。先天的レベルの馬鹿、天然に近いお馬鹿さん、世間並み、幾らか又はある程度の賢者、秀才レベルの賢者、百年以上に一人出るか出ないかと言われる天才…と、まあこうなる。これだけランクがあれば、やはりとんでもないことを起こす人も現れる。なんだ、かんだ…どうたら、こうたら…で警官隊と衝突、流血の惨事、激しく車が燃える光景、銃の打ち合い・・など、これはある国で起きている現在の惨状だが、こうした行為は人々が生きていく上で完璧かんぺきに無駄な動きだ。破壊の前方に平和や人々の生活の向上はなく、生れるのは悲劇ばかりなのだ。そうと分かっていても集団となれば、人はそれをやる。

『0秒12の差の金メダルです!!』

 テレビのアナウンサーが興奮の声で話している。

「ふ~~ん、0秒12か…。両手を叩く速度の差だな。それで金と銀か! どっちも金やれよっ!!」

 睦彦が珍しく興奮している。

「私はダイヤの方がいいわ。ねぇ~~」

 妻の照代は天然気味で、しばしば睦彦を困らせた。おいおい! オリンピックの話だ! と言うのも無駄に思え、いや、逆に火に油だ、危ない危ない! …と睦彦は瞬間、口をつぐんだ。下手へたに返せば、恐らくこの前、強請ねだられたダイヤの指輪を買わされることは目に見えていた。睦彦の頭脳は無駄のない動き・・をしたのである。

「なんだ、もう明日、閉会式らしいぞ…」

 睦彦はリモコンをいじってチャンネルを変えた。緻密で無駄のない動きを頭脳が命じたのである。言動、行動とも自身の気持を少しカムフラージュする行為でもあった。妻の「ねぇ~~」という言動をらして遠ざけたのである。剣道なら、打ち込まれた竹刀しないを払い、逆に小手を決める…ような動きだ。

「皆さん、頑張ったわね…」

 功を奏したようだ…と睦彦は、ひとまずホッとした。その直後、照美が手にした袋から昨日、買ったネックレスを取り出した。

「ねぇ~~、似合う?」

「…」

 睦彦は逆に一本とられていた。夫の一瞬の油断を見据みすえ、天然の妻が放った無駄のない動きだった。


                  完

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