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(30) テリトリー

 すべてのものには、その影響力を共有し、他の影響力を排除しようとする範囲がある。人はそれを領域テリトリーと呼ぶ。それはウイルスなどのミクロの世界から国や宗教、思想の違いで生じる人的摩擦というマクロの世界まで、全般に共通して存在する。

 浩輝はよしっ! とばかりに遊び仲間から勝ちとったビー玉を見ながら北叟笑ほくそえんだ。これで当分の間、自分のテリトリーを侵略する手強てごわい相手はいなくなったぞ…と思った。隣町からテリトリーを広げ、ついに決闘的な勝負となった今日の相手は、それほどの腕の持ち主だった。浩輝のビー球の命中率は、ほぼ百発百中で、よほどのことがない限り、僕に勝てる相手はないだろう…と、自負する腕の持ち主だ。その腕に匹敵するほど今日の相手は強かった。いつもは、小一時間で片づく相手だったが、今日はもう薄暗い夕闇が迫っていた。三時過ぎから始めたのだから、数時間は対戦していたことになる。相手は大物で、百発以上は持っていた。恐らく、あいつも僕と同じように多くの相手に勝って、せしめたのだろう…と浩輝には思えた。

「おはようございます…」

「おっ! おはよう」

 小学校への通学途上、先を歩いていた上級生が浩輝に挨拶し、立ち止って道を譲った。浩輝も馴れたもので、さも当然とばかりに落ちついて返事した。半年ばかり前、この辺りを牛耳ぎゅうじっていた相手だったが、勝負の結果、浩輝によってスッカラカンになるまでビー玉を取られ、今では完全に浩輝を崇拝リスペクトしていた。その上級生を尻目に、浩輝はこの辺りは完全に僕のテリトリーだな…と、まんざらでもなかった。

 だが、世の中は栄枯盛衰である。そんな浩輝の権勢も、あるときを境に衰え始めた。新しく転校してきた一年下の生徒によってである。その生徒のビー玉の腕は神童と呼ぶに等しかった。

 一年後、浩輝はその生徒とテリトリーを共有し、和解した。浩輝には、このままでは自分のテリトリーを失うぞ…という事前の先見性があったのだ。これが、戦国の現代を生き抜く道か…と、歴史好きの浩輝は、しみじみと子供心に思った。


                  完

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