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(26) 遅刻

 昨日は土曜だったから、今朝はゆっくり寝ていてもいいんだ…と翔太は半分、目覚めた意識の中で思った。ただ、もうひとつ確信が持てなかったのは、昨日が土曜だったというはっきりとした記憶である。はっきりしていれば、なんの問題もなくゆっくり眠っていられる。しかし、この寒い厳冬に、体温でほどよくぬくまった寝床ねどこから出るのは気が進まない。上手くしたもので、翔太が眠るベッドからわずか1mばかりのところにテレビのリモコンがあった。それはいつもそこにあるから翔太の頭の中でその映像が浮かんでいた。翔太は無意識で、毛布をかぶったままリモコンに近づき、手にして押した。

「七時のニュースです。濃霧の影響で始発から軒並み1時間から2時間の遅れとなっており、構内は通勤客で混雑しています」

 翔太は霧か…と最初思い、しばらくして通勤客? と思った。日曜に通勤客はおかしい? と瞬間、頭が巡ったのである。まさか月曜? いや、そんなことはないだろう。昨日、休んだじゃないか…とすれば、やはり今日は日曜だ…と、また翔太はウトウトした。20分ほど過ぎたときだった。翔太はハッ! と目覚めた。その目覚め方は尋常ではなく、ベッドからガバッ! と、直立する目覚めだった。それには訳があった。昨日は小学校の創立記念日で学校が休みだったのだ。そのことをうっかり翔太は忘れていた。蒼香ちゃんのお誕生パーティーに呼ばれ、すっかり創立記念日の休みだという記憶が飛んでしまった・・ということもあった。

 とにかく、急がねばならない。目覚ましを見れば、7時30分である。いつもなら、登校で家を出る時間だった。顔を洗うとか食事とかの考えは、まず捨てねばならない。着替えをし、今日は何曜だったか? と、次に翔太は巡った。7時35分になった。火曜だったことを思い出し、教科書とノート類を乱雑にランドセルへ詰め込んで部屋を出た。

「行ってきます!!」

「あら、翔ちゃん、どうしたの?」

「遅刻だよ、遅刻!」

 翔太は玄関へ走り、バタバタと靴をいた。ママの美紀が怪訝けげんな表情で玄関へ出てきた。

「あら! 今日は振り替え休日じゃなかったっけ?」

「えっ?」

「だって、そう言ってたわよ。創立記念日と振り替え休日で連休になるって」

「…そうだった?」

「ええ…。違った?」

「そうそう、そうだった。遅刻すると思った」

 翔太はホッ! として、靴を脱いで、ゆったりと上がった。

「それはいいけど、今日は8時から野球の試合でしょ?」

 翔太は遅刻だ! と、あわててランドセルを肩から降ろした。遅刻すると草野球の監督にお目玉をらうのだ。翔太は、またバタバタし始めた。


                  完

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