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(20) もう、いいかい?

 功太は四人の仲間と、かくれんぼで遊んでいた。魚屋のみっちゃん、乾物屋の文ちゃん、八百屋の良夫君、肉屋の進の四人である。

「もう、いいかい?」

 今日は母親の和江に買物を頼まれていたから、寄り道をせず早めに戻ろうと、功太は買物を済ませたのだが、いつもの遊び仲間に見つかり、つい遊んでしまったのだ。誰も盗らないのが分かっているから、功太は買物袋をベンチの上へ置いて遊び始めた。缶けりから始まり、ケンパ、ビ―球と進み、すでに二時間が経過していた。そして今、かくれんぼである。ジャンケンに負けて鬼になった功太は途中抜け出来なくなっていた。

「ま~だだよっ!」

 目を隠し、声を出した功太に割合、大きな声が複数、返ってきた。これを聞けば、待たざるを得ない。実のところ、功太の心はいていた。早く帰らないと和江に何を言われるか分からないからだ。当然、それは叱られることを意味した。だから、気が急いていた。本当は、ケンパが終わったとき、帰ろうとしたのだ。そのとき、進に呼び止められた。進は口が上手く、よいように丸め込まれ、あとは、ズルズルと流されていった。こういう決断力のなさは父親似に違いないと功太には思えた。けれど今は、そんな流暢りゅうちょうなことを思っているときではない! と、功太は、また声を出した。今度は一回目より少し大きめにした。

「もう、いいかい?!」

「ま~だだよっ!」

 少し遠退いた複数の声が返って来た。声の大きさからして、もう一回くらいかな…と、功太は思った。

「もう、いいかい?!!」

 しばらくして、功太が三回目の声を出した。

「もう、いいよぉ~」

 功太は、よし! と目を開けて走ろうとした。だがそのとき、功太の目の前には母親の和江の姿があった。

「よかないわよ! 功太!!」

 功太の前には、親鬼の怒った顔があった。功太は隠れようと走り去った。


                 完

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