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真夜中のお茶会  作者: ねむりねこ
出会い編
71/81

70話 【眠ったその後で】

卵の処遇を巡るオジサン達の話し合い。


 エディアルドは昏々と眠り続ける。

 その腕の中に大きな白い卵を抱いたまま。


 担架に乗せ部屋に運び込まれた後、寝台に寝かせる為に卵を引き離そうとしたのだが、不思議な事にエディアルドの腕は張り付いたように卵から離れなかった。仕方無くそのままでオーエン医師の診察を受けたのだが、魔力は減っているものの熱は無く、呼吸も脈拍も異常は見られず眠っているだけだろうと診断された。

 寝台の上で、まるで護るかのように卵を抱き込むエディアルドを、両親や弟妹、親しい人々は無理に起こそうとはせず静かに見舞っていく。


 オーエン医師とマティアス、そして魔術師長がエディアルドの置かれている状態を調査・診断したところ、エディアルドの魔力が卵へと注がれていると判明した。

 報告の際エディアルドの体調を心配した国王が、得体の知れない卵を壊してでも引き剥がすよう指示を出そうとしたが、診察に当たった三人共が引き剥がす事は却って危険だと国王を諌めた。


「件の『卵』に殿下の魔力が流れているのではなく、繋がって共有しているような状況なのです。殿下が魔力を生成し『卵』へ与えていると言えばいいでしょうか」

「つまり殿下が卵を育てているような状況です」


 マティアスと魔術師団長の言葉に国王は眉を顰めた。エディアルドの魔力が『卵』に流れ込んでいるのならば尚の事、引き離せば回復が速くなるのではと考えるのは至極当然である。


「確かに殿下の魔力は卵に注がれておる。しかしの、……あの庭で何があったのかは判らんが、この数年枯渇に近かった殿下の魔力が以前よりも増えてきておるんじゃよ」

「魔力が、増えた……?」


 うむ、と頷いてオーエン医師が表情を緩める。

 最初に倒れてから発症した、原因の判らない魔力の枯渇――エディアルドの病の原因と思われるその症状が消えていた。


「五年前、御倒れになられる以前の殿下は、並々ならぬ魔力の持ち主でいらっしゃった。じゃが、倒れられてからは御存知の通り、我等がどれほど手を尽くしても消えた魔力が元に戻ることは無かった。それが『卵』に魔力を与えている状態でも、それと判る程に魔力が感じられるようになってきておる。――此度の騒動で原因が取り除かれた故の回復……と考えてもいいのではないかの」


 畳み掛けるように魔術師団長が続ける。


「陛下。殿下はハーヴィル近衛騎士副団長殿に『卵は壊すな』と命じられたそうです。目醒められてはおりませんが、卵を保護する事は殿下の御意志。しかも、現状、殿下と『卵』は魔力の共有……と言うよりは供与ですが、互いに繋がっているのです。強引に繋がりを断てばどんな障りが出るやも知れません」

「むぅ……」


 もっともな指摘に国王は口を噤む。しかし、いくらエディアルドが望んだとしても、その身を案じる父親としては簡単には納得できない。

 そんな国王に、マティアスはそれと気付かせないように目を細める。


「陛下。もう丸二日経過しております。あの『卵』が殿下に害を為す物だとしたら、疾うにその影響が出ておりましょう。ですが、殿下は未だ眠ってはおられますが、状態としては悪くはありません。勿論、万が一に備えて大抵の状況に対処できるよう準備はしてあります。何より、殿下御自身があの『卵』を護るように抱いていらっしゃる――不思議な事ですが、まるで糊で貼り付けたようにぴたりとくっ付いて……容易には剥がせませんね、あれは」


 剥がせるものならとっくに剥がしている。つまりはそういう事だろう、と国王は小さく溜息を吐く。


「……あの『卵』は、何だ?」


 見た事もないような、大きな卵のような(・・・・)もの。


「何だ、と訊ねられても答えを我等は持ち合わせておりません。ですが……」

「最初は石かとも思いましたがね」

「中身が何かは知らんが……まあ、何かが生きているのは確かじゃの」


 耳を当てれば、小さく命を刻む音がするのだ。

 エディアルドが護る不思議な『卵』を、確かに存在する命の芽を、ただ邪魔だからと無慈悲に摘み取るのは憚られる。無論、危険と判断すれば迷うものではないが、その危険が感じられないだけに躊躇してしまうのだ。


「殿下が『壊すな』と告げられたのであれば、中で息づいているモノが何であるのか、殿下は御存知であるという事でしょう」

「エディアルドの目が醒めるまで待つしかないと言う事か?」

「或いは、卵が孵化するまででしょうか」

「どちらにしても、今は様子を見ながら待機というのが無難かと」


 目を閉じた国王は、消極的な対応しか出来ない状況に苦く息を吐く。有効な手段があれば何を賭してもして見せるものを。そう思いはするが、無いのであれば致し方ない。


「……判った。エディアルドの身に危険が及ばぬ限りは強硬な手段は控えよう。僅かな変化も見逃さぬよう、確りと見守れ。……オーエン」

「はい」

「エディアルドの体力だと、飲まず食わずで身体はどのくらい耐えられる?」

「さて。……そうですな。水分を補給する魔道具を使えばとりあえず一週間は大丈夫でしょう。ただ、魔道具はあまり使いたくないですな。魔力の流れにどんな影響が出るか……出来れば疾く目醒められて、御自分で食事をお摂り頂くのが一番なんじゃが、こればかりはのぅ」

「体力的に限界が来る前に『卵』を離す手段を見つけよ」

「御意」


 現状維持が最適とはいえ、エディアルドが消耗し儚くなっては意味が無い。そうなる前に何とか目醒めて欲しいと全員が思った。


 願いが通じたのか、厳重で細やかな監視――もとい、見守りの中、卵を抱いて七日目。

 長かった眠りからエディアルドは目醒める。


なんとなく閑話っぽい?

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