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真夜中のお茶会  作者: ねむりねこ
出会い編
34/81

33話 【傍に居たいのは。】

 程無く仕上がったベルベットのチョーカーは、赤地に白のレースが可愛らしいとシャーロットには大変好評だった。

 くまはリボンになったそれを披露するようにくるりと回って見せ、ローラとシャーロットにありがとうとぺこりとお辞儀をする。それがまた可愛らしいとシャーロットは大喜びだったが、今日の勉強を放り出してきたことをエディアルドは忘れてはいない。


「シャロン。とりあえず用は済んだはずだな?」

「…お兄様、ひどいですわ。わたくしだって精霊様と仲良くしたいのに」


 瞳を潤ませ見上げてくるシャーロットは、思わず言いなりになってしまいそうな雰囲気を纏っている。きっと何も知らない者ならころりと騙されていただろうが、そこは生まれた時からの付き合いである。エディアルドはこれ以上甘やかすつもりは無かった。


「何も来るなとは言っていないだろう?きちんと自分のするべき事をしてからおいでと言っているんだ。教師だって予定が狂えば困ると、判っているだろう?」

「お兄様の意地悪!いいですわ!今日の予定をこなしてから来ればよろしいのですわよね?精霊様、お待ちになっていてくださいましね!とっとと片付けて参りますわ!」


 実に勇ましく、エディアルドに指を突き付けてシャーロットは宣言していた。喧嘩を売られたと勘違いしそうな勢いだったが、やる気になったのは、まあ、いいことなのだろう。

 来た時同様、素晴らしい勢いで出て行ったシャーロットを見送った一同は、誰ともなく溜息を落とす。


「…あれですわね。油断するとぬいぐるみを御自分の部屋に攫って行きそうな勢いですわね」

「くまがこの部屋から出ても喋れるなら間違いなく持って行くだろうな」

『ええぇ!?』


 元々はシャーロットのぬいぐるみである。そこを主張して自室に持ち込むことは十分に考えられる。

 驚く少女にエディアルドは淡々と説明していく。


「シャロンのことだ。良いと言えば嬉々としてそうするぞ?むしろ、そのリボンだけではなく、いろいろ着飾ってくれると思うが?今はぬいぐるみだから気にしていなかったが、お前も年頃の娘のようだし、シャロンの許へ行きたければ行ってもいいぞ?」

「エディアルド様、それはちょっと…」


 好きにしていいと言われ少女は困惑している。

 傍で聴いていたニナはこの正体不明の何かが入っているぬいぐるみを、曲がり形にも『王女』という立場のシャーロットに渡すのは拙いのではないかと控えめに異を唱えた。けれど、エディアルドは心配するニナに呆れたように苦笑を返す。


「今更だろう。くまは行こうと思えばどこへでも行ける。まあ、悪さをするわけでなし、したらその時は神殿から神剣でも借りて祓えばいい」

「殿下は…彼女を危険とは思われない?」


 マティアスが幾らか表情を改めてエディアルドに問うた。


「思っていたらシャロンの許に行けとは言わないさ。もちろん、身元を捜す気にもならなかったな。お前こそ、危険だと思うなら何とかしたらどうだ?」

「それでもよろしいので?」

「構わん。自己申告に過ぎないが、ぬいぐるみを動かす程度しか能の無い幽霊なんぞ、お前にとっては羽虫をたたき落とすより楽なものだろう?」

『ぅえっ!?』


 思いがけず自身の処遇が危うくなりそうな気配に、ぬいぐるみに憑いた少女はびくりと身を震わせる。


「そうですねぇ…。もし殿下やシャーロット様が怯えてどうにかしてくれと言われるのなら考えなくもないですが」


 ちらり、とくまに視線を移すと、そのつぶらな瞳をひたりとマティアスに向けたまま固まっている。もしぬいぐるみでなかったらだらだらと冷や汗を流していただろう。


「まあ、弱いモノを虐める趣味はありませんので、殿下が許容する限り私は静観しておきますよ」

「そうか」


 にこり、と笑みを向けられくまはほっと胸を撫で下ろした。


「で、どうするくま?シャロンの所へ行くか?間違いなく可愛がってくれるぞ?」


 エディアルドに尋ねられ、くまは考える間もなく首を横に振った。


『…ううん。エドの傍がいい』

「私はシャロンのように娘らしい会話をすることも遊ぶこともできないぞ?」

『いいの』

「この部屋と同じように誰かと話す事が出来たなら、その方がお前にとっても楽しいのではないか?」

『…それでも。…エド以外の人とお話し出来るようになったのは、とっても嬉しい。でもね、アタシはやっぱりエドの傍がいい。遊んでくれなくてもいいの。可愛く飾らなくたって…そりゃ可愛いのはなんか楽しいけど、でも無くてもいいの。どうしてかなんてアタシにもわかんないけど、エドの傍にいたいと思うよ。それじゃあダメなのかなぁ?』

「そうか」


 エディアルドはふわふわとしたくまの頭を柔らかく撫でた。


「まるで親鳥の傍を離れないひよこのようですねえ」

「ですわねぇ」


 微笑ましく眺めるマティアスと苦笑を浮かべるニナが零した感想に、エディアルドは微妙な表情を浮かべる。


 一応、くまなんだがな…。


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