表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真夜中のお茶会  作者: ねむりねこ
出会い編
33/81

32話 【きれいなものは好きですか?】

 そして幾許もなく、静けさを打ち払うかのようにシャーロットが戻ってきた。背後には昨日くまのぬいぐるみを繕ってくれたローラを従えている。


「お待たせしましたわ!ローラ、くまの精霊様には何が似合うと思って?サテンも素敵ですけどレースの方がいいかしら!?」


 戻るなり捲し立てるように提案するシャーロットに引っ張られるようにして連れて来られたローラは、困惑を隠せず元気過ぎる主を諌める。


「シャーロット様、落ち着かれなさいませ。エディアルド殿下、突然の入室申し訳ございません。御無礼をお許しください」


 シャーロットに引っ張られたとはいえ、王族の私室に許可なく入室するのは流石に無礼が過ぎるだろうとローラは平伏する。

 エディアルドとしては、むしろ振り回されているローラが気の毒に思えてならない。


「よい。シャロンに引っ張られてきたのだろう?済まないな」


 畏まらずとも良いとエディアルドが許可を出すと、ローラはほっとしたように笑みを浮かべた。


「ありがとうございます。シャーロット様のお話ですと昨日のぬいぐるみに首飾りを作ると言うことでしたが…」

「だってローラ!どうせ身に着けるのなら可愛らしい方が良いとは思わなくて?精霊さんだって女の子ですもの!綺麗なものや可愛いものの方が嬉しい筈ですわ!」


 ローラの問い掛けを遮るようにシャーロットがレースを握り締めながら力いっぱい主張する。そんなシャーロットに慣れているのか、ローラは少し考えるような素振りをした後、尤もな提案をした。


「シャーロット様。同じ年頃であっても好みは人それぞれ違いましてよ?ここは御本人に選んでいただいては如何でしょう?」

「それもそうですわね!さあ、精霊様!御好きなものをお選びになって!」


 ローラの言葉に頷き、シャーロットがぬいぐるみのくまの前にずらりと種類の違うリボンを並べて見せる。

 選べと言われた少女はどれを選んでいいのか分からず、困惑の果てにエディアルドを見上げた。


『エ、エド~…どうすればいいの~~』

「箱の中から気に入ったものを選べばいいだろう」

『だって、いっぱいあるよ~?』


 装飾品に興味のないエディアルドは素っ気ない。特に女性の身を飾るリボンなど、縁のない物の筆頭なので相談されても困るのである。


「…なんなら全部着けてもらったらどうだ?」

『ええ~!?』


 面倒になってぼそりと適当なことを言えば、少女は情けない声を上げ、聞き捨てならないとばかりにリボンの持ち主であるシャーロットが眉を吊り上げた。


「まあ、お兄様!何でもかんでも着ければ良いというものではありませんのよ?ごてごてと飾ったりしては却って品が無くなってしまいます!」


 そう言われても。

 見下ろした先にはぬいぐるみのくま。しかも中身は記憶喪失の訳の判らないもの。


「品…このくまのどこにあるんだそんなもの…」

『どこだろうねぇ?』


 見つめられ、随分と失礼なことを言われた筈の少女は、判っているのかいないのか自らもう~ん?と首を傾げている。

 そんなふたりにシャーロットは痺れを切らした。


「もう!お兄様ったら!いいわ、こうなったらわたくし達で選びましょう、ローラ」


 主の言葉に控えていたローラは頷き、くまのぬいぐるみに合わせた色合いや材質、型を考える。

 普段からシャーロットのリボンやドレス、挙句はぬいぐるみやその装飾品に至るまでを一手に引き受けているローラにはお手のものである。


「そうですわねえ。石が黒ですから地は赤か紺が良いでしょうか。ベルベットの縁に白のレースとかは如何ですか?」

「いいわね!女の子ですから色は赤にしてみましょうか。石は精霊様がお話しするのに必要な大切なものだから外れないようにしなくてはね!じゃあ早速作ってくれるかしら」

「畏まりまして」


 シャーロットに此処で作業するようにとソファに促されたローラは、持参した大ぶりの箱から赤いベルベットの布地を出してしゃきしゃきと鋏で裁断し、端の始末をすると白のレース糸で縁取りを始めた。その手際は恐ろしい程に早く、迷いがない。

 一連の手際を見ていたニナがほう、と溜息を吐く。


「流石ですわね…」

「でしょう?ローラが作るレースは最高でしてよ!わたくしのリボンは全てローラが作ってくれていますの」

「それはすごいな。だが、くまの物ににそこまで気合いを入れんでも…」


 ローラが素晴らしいお針子なのは理解できるが、ぬいぐるみであるくまにその技術を注いでもあまり意味は無いのではないか、と思い呟いたエディアルドだった。しかし、耳聡く呟きを拾い上げたシャーロットにすかさず反論されてしまう。


「まあ、お兄様!解っていませんわね!女の子は幾つになってもどんな時でも可愛く綺麗にしていたいものですのよ!」

「そういうものか?」

「そういうものです!」


 力説するシャーロットだったが、肝心のくまに憑いた少女は首を傾げていた。


『…よくわかんない…。でも、綺麗なものは好き、かも?』


 何故そこで首を傾げる、くま。

 自分の好みくらいはっきりしておけ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ