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真夜中のお茶会  作者: ねむりねこ
出会い編
3/81

2話 【落ち着きましょう。】

『うえぇ~ん!痛いよぅ!?抜いて~!死ぬ~死んじゃうからあ!?』


 反射で突き刺してみたものの、動いて喋るくま(ぬいぐるみ)に青年は戸惑いを隠せない。何せこんな珍妙なものは今まで見たことがない。じたばたともがいて痛いと喚くが、そもそも中身が綿のぬいぐるみに痛覚があるのだろうか?

 大きさはちょうど歩き出す頃の赤ん坊ほど。見たところ武器の類は持っていない。周囲に刃物も見当たらない。

 だが、だからと言ってこんなにも怪しげなモノを解放する気にもなれない。


「…おい、くま」

『うぇ~ん、刺されたよう、痛いよう、死んじゃうよ~』


 えぐえぐと泣き出すくま。

 当然、瞼などないし、涙は出ていないが雰囲気でそうと察せられる。

 だがしかし、それは青年の同情を誘うものではなかったらしい。呼び掛けたのに無視された格好になった青年の眉がむっと寄せられる。


「落ち着かんか!そもそも貴様ぬいぐるみだろう!血も出んくせにどうやったら死ねると言うんだ!?納得いくよう死ぬ前に言い残してみろ!」

『うぇ?…お?…おぉ~~!!』


 言われて気がつきましたと言うように、その腹に剣を刺したまま、くま(ぬいぐるみ)がぽん!と手を打った。実際に耳にした音はぱふっと、何やら相当に軽かった。


『そういえばそうですね!いきなり剣で斬られて刺されたから動転しちゃった!』

「…」


 どうやら落ち着いたらしく、うんうんと頷くくまに青年は胡乱な眼を向け、疲れたように溜息を零した。喋るぬいぐるみという面妖なものをいったいどうすればいいのか、と思案し出した青年に、くま(ぬいぐるみ)はぽふん!ともう一度手を合わせ、首を傾げ。


『死んでたら、もう死なないですよね!』

「…は?」


 唐突に告げられた、思ってもいなかった言葉に、青年はまた訝しげに眉を寄せる。


『アタシ、ぬいぐるみじゃないですよ?あ、今は確かにこのぬいぐるみ借りてるんだけども』


 つぶらな瞳でじっと青年を見つめ。


『アタシ、どうやら幽霊みたいなんです』



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