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真夜中のお茶会  作者: ねむりねこ
出会い編
2/81

1話 【こんばんは。】

 コンコンコン。


 扉を叩く音がする。


 コンコンコン、コンコンコン。


 カーテンを閉め忘れた窓からのぞく月は満月。既に中天に差し掛かったその位置は真夜中を示す。 

 月明かりに照らされた寝台の上、僅かに身じろいだ盛り上がりは、けれど起き上がることはなくじっと扉を見つめる。


 コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン。


 3回ずつ、きっちりとしたリズムで響く音は途切れることなく続く。大概しつこい。

 寝台の上でその音を聞きながら、何者だろう?と部屋の主は思う。

 身の回りの世話をする侍女であるならば声をかけるだろうし、そもそも夜中に呼ばれもしないのにこの部屋へ訪れることはしない。警護の者とて然り。火急の用であるならば呑気に扉を叩き続けはしないだろう。それでは命を狙うものだろうか?と思い、その可能性は著しく低いと考え直す。暗殺ならば音を立てずに忍び寄るだろう。

 では、この扉の向こうに居るのはいったい何者だ?と、結局は最初の疑問に立ち戻る。

 かといって誰何するのも躊躇われ、何とはなしに寝台に立てかけてあった剣を引き寄せる。その間も不審な音は続く。

 これがか弱い女性であったなら恐怖のあまり悲鳴を上げるなり、気絶するなりしていたのだろうが、幸いにして(?)部屋の主はすでに成人を迎えたであろう青年であった。


 コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン、コンコン…ゴ!バフッ!


「…」


 規則正しく続いていた音が崩れた。 向こう側で何やら変化があったらしい。

 これだけ音が続いていたのに、警邏中の兵が駆け付ける様子がないのは何故だろうか。

 さすがに少しばかり気になって、青年はそっと寝台から降りる。

 下ろした足首がほっそりと白い。月明かりに浮かぶ陰影で、その身体がいささか細過ぎることが夜着を纏っていても判る。けれど脆弱な印象を与える体躯であるにもかかわらず、その動きに怯えは感じられない。

 音をたてないように、青年は裸足のままゆっくりと扉に近付き耳を澄ませる。すると何やらごそごそと動く気配がある。だが、その気配は随分と床に近い。そう、まるで床に這っているような…?

 訝しく思いながら扉の陰に身を潜めそっと扉の取っ手を握り、一気に開く。と同時に手にした剣で視界に入り動いたモノを薙ぎ払う。


「!?」

『うきゃあぁ!?』


 妙な手応えと上げられた悲鳴と、何より目にしたモノに青年は目を瞠り、思わずソレに持っていた剣を突き刺した。


『ぎゃああ!?何すんの~~!?痛いよ!?死んじゃうよ!?ヒドイよ~!!』

「…」


 青年の視線の先、剣先に床に縫い留められ短い手足をじたばたとうごめかし抗議の声を上げるそれは…。

 黒曜石のようなつぶらな瞳を持つ、つやつやとした茶毛の。


 どこからどう見てもまごうことなく。



 ぬいぐるみのくまだった。



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