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婚約期間最短記録更新。御神託で婚約した相手が二回連続で不良品だった件について。

作者: 櫻井萌咲
掲載日:2025/12/31

「俺は、お前との婚約を破棄する!」

「そ、そんな……どうしてですか!?」

「お前が不良品だからだ!」


神聖な教会。

祈りの時間に、あまりにも場違いな婚約破棄が高らかに宣言された。

だが、周囲の人間は誰一人として反応しない。

この時間、どれほど叫ぼうと、声が届くのは当事者同士だけ。

祈りの場は、女神と運命を交わすための、完全な密室なのだ。


「【御神託】!不良品交換だ――――!!」


男がそう叫んだ瞬間。

祭壇に祀られた縁結びの女神像が、淡く光を放った。


<この度はご不便をおかけして申し訳ございません。一週間後に改めて【お品物】をお届けいたします>


「きゃーーーー!!!!」


事務的すぎる声と共に、婚約を破棄された女性は、悲鳴を残してその場から消え去った。


「……くそ。いつものことながら、どうしてこう要らぬ手間が増えるんだ」


肩を落として教会を出た男・ダリルは更に呟いた。


「【御神託】でまで不良品だなんて勘弁してくれ……」


この世界での出会い方は三つ。

【恋愛】【お見合い】、そして【御神託】。

中でも【御神託】は、神の力で“運命の相手”を一発で引き当てられるはずの、究極システムだ。

御神託による出会いでは、瞬間的に恋に落ちるため、婚約が初期設定で結ばれる。


……本来なら。


だが、ごく稀に撰ばれないはずの結婚詐欺師や不貞を働いている“不良品”がすり抜けてしまうことがあるらしい。

その確率は宝くじ並み。

そしてダリルは、そういう「引き」だけは異常に強い男だった。

本を買えば乱丁。

服を買えばほつれや穴。

日用品は欠け、壊れ、傷ついている。

不良品交換は、もはや日常。


「流石に、これは堪える……」


ダリルの結婚適齢期は、すでに終わりかけていた。

女性との縁もなく、見かねた両親と友人から勧められた最終手段が【御神託】。

まさか初手で、幻レベルの“不良品”を引くとは思ってもいなかった。


──婚約期間、わずか一分。


「……次は一週間後か。面倒くせぇな」


ダリルは、遠い目で空を見上げた。


──────


一週間後。


「【御神託】ぅぅぅ!!検品してんのかぁぁぁ!!不良品交換だぁぁ!!」


──奇跡の二度目。婚約期間、45秒。


<大変申し訳ございません。今回のご事情を鑑みまして【お申し込みのキャンセル】も承っておりますので、ご検討いただきますようお願い申し上げます>


「はぁぁぁ!?誰がキャンセルしたいって言った!?キャンセルしたそうにゴネて見えてんのか?!カスハラ扱いか!?キャンセルするくらいなら最初から御神託なんか頼まねぇよ!!コンチクショーォオオオオオ!!!!!!」


<大変、失礼いたしました。それでは、改めて検品の上で【お品物】をお届けいたします>


「二回目の時にやれ!!仕事が雑すぎるんだよ!星一つも付けたくねぇ!」


御神託を受け運命の出会いを果たした者は、教会に石板を奉納する。そこに刻む星の数が、感謝と信仰心の証。今のダリルは、その石板を叩き割りたい衝動と戦っていた。


そして、怒りがそれなりに冷めると、三度目への不安だけが残った。


──────


更に、一週間後。


「きゃっ!」

「えっ?」

ダリルは突然、教会に転送された。

しかも、目の前には赤毛の女性が立っている。

予告のない、三度目の【御神託】。


「わ、私……突然、何故、ここに……」

「多分、俺の【御神託】かと」

「まぁ、これが噂に聞く【御神託】なのですね」


素朴で、少し気弱そうな女性だった。


「失礼ながら、検品させてもらう」

「は、はいっ!」


彼女は手にしていた【納品書】を差し出す。そこには、簡単なプロフィールだけでなく、不良品に該当していた場合の情報が記載されるが、本来通りの空白であった。


「三度目も不良品だったら、本気で石板を

叩き割ってたな」


その言葉に、彼女はびくりと肩を震わせた。


「あ、あの……ごめんなさい……私、傷物なんです……」


額と腕には傷の跡。

それが理由で、かつて想っていた相手に振られたという。


「俺は気にならねぇよ。むしろ、その程度なら、うちに来いってなるな」


彼女は目を丸くした。


「ん?ほら、俺の【納品書】も見とけ。返品交換出来るのはお互い様だ」

「私は、御神託を信じます」

「信じる信じないは、今の俺にとっては複雑だが……、俺はダリル。よろしく」

「アイビーです。よろしくお願いします」


<お待たせして申し訳ございません。先程、良品のお手配を差し上げました。ご査収ください。なお返品交換の際はお手元に届いてから八日以内のご連絡をお願い申し上げます。>


「…………(やっぱり石板を割るべきか?)」


こうして二人は出会い、時間を重ね、返品交換期限の八日目。互いの気持ちを確かめ合い、婚約の継続を決めた。



のちに二人は、仲睦まじい夫婦となる。


──────


【奉納された石板】

★★★★☆

最愛の嫁に出会えた。

だが、二回も不良品交換になるとは思わず、事前に検品もしない仕事の雑さに星マイナス1。

【御神託】と書いて【○○○ん】と心の中で読む話。


※女神達側からしたら、人間は客でもあるけど品物でもある。


※女神達側の落ち度の不良品交換なので婚約破棄の回数はノーカン。当事者間のやり取りだからバレない。


※御神託にて、相手は精神体で召還され、自己紹介(納品書=プロフィール交換を)したら肉体に戻る。喚び出されてる間の時間は止まっているため、どんなタイミングで召還されても支障は出ない。神託の意味に合うようにこじつけるとしたら、石板を媒体(プロジェクター)にしてるって事で。納品書もその一部(お告げ)。


※勿論、女性からも御神託は申し込める。だが男女共通で申込み条件がいくつかある。


※不良品云々と流れについては、当方の実話が元。無い語彙力を全力で振り絞って遠回しに丁寧にオブラートに包みまくった文面で対応した心の中は嵐。


※女神相手に不敬な態度で突っ込んでいるダリルだが客側なので天罰は無い。


→女神側視点も同時進行で考えてある。が、投稿するかは不明。

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