☆38☆
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昼休み、
炎華は屋上で、
竜破が連れて来る、
とある人物を待っていた。
竜破が、
「連れてきたぜ、炎華」
七美がオドオドしながら、
「あの〜、あたしに、お話って何でしょうか?」
炎華が、
「春海の、というより、秋菜の絵を切り裂いた犯人について話そうと思うのよ」
七美が、
「どういう事ですか?」
炎華が、
「昨日はアイスを食べたわよね。
アイスを入れた箱の中には、
保冷用のドライアイスが入っていた。
あなたはそれを使って、
あるトリックを仕掛けたのよ」
炎華がビニールを取り出し、
「昨日、たまたま春海は早く帰った。
そこで七美は、
ドライアイスを使ったトリックを実行したのよ」
炎華が毛糸の糸クズに視線をうつし、
「これは鍵の返却ボックスの中に落ちていたわ。七美の手袋の毛糸と一致するはずよ」
七美が、
「たまたま入ったのよ。昨日、鍵を返却した時に」
炎華が、
「実験してみましょうか?
本当に、それで手袋の糸クズが入るかどうか?」
七美が黙り込む。
普通に考えて、それだけで、かなりの糸クズが入る、というのは無理がある。
炎華が、
「あなたが昨日、手袋をつけて鍵を返却したのは、鍵と一緒にドライアイスを持っていたからよ。
ドライアイスは素手では持てないからよね」
竜破が、
「なるほど、それでフォーチュンクッキー事件と同じってわけか」
炎華が、
「そうよ。
七美は鍵を鍵返却ボックスに入れると見せかけて、
ドライアイスをボックスに入れたのよ。
ボックスの中では、
あたかも鍵が入ったような、
ガチャッという音が鳴ったわ。
誰も、それをドライアイスとは思わない。そして、犯行後に鍵をポストに戻したのよ」
炎華が一息つき、
「だけど、
ドライアイスを握っている時に、
手袋の毛糸がドライアイスに付いてしまったのよ。
ドライアイスは溶けて気化したけど、
毛糸の糸クズだけが残った。
というわけよ」
七美の表情が憎しみで豹変し、
「春海が悪いのよ!
春海が、あたしの最高傑作を黒く塗りつぶしたから!
そのせいで、あたしは描けなくなった!
あれがなければ、今、美術界を騒がしていたのは、
春海じゃなくて、あたしだったのよ!」




