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   ☆30☆

 

   ☆30☆


 ピノパーティーのあとは、お茶会となり、秋菜はわざわざ春海のコーヒーを作って持って行った。

 春海はコーヒー党らしい。

 春海は半ば無意識で絵を描きながらコーヒーを口にするが、

「まずい! 砂糖が入ってないじゃん!」

 憤怒の表情を浮かべ、春海はお茶会の席にある砂糖を取って戻り、コーヒーに入れると、絵筆の柄で乱暴にかきまわし、一息にグイグイ飲んだ。

 行儀とか、常識とか、そんな物を一切持合わせない春海であった。

 我輩たちはその後、トランプをやったりゲームをやったり。美術部らしい事は何もせずに時を過ごした。

 冬子が唐突に、

「秋菜はやたらと春海の贋作を作ってネットで売ってるけど、偽物をつかまされた客は悲惨よね」

 秋菜が憤然と、

「そんな事ないよ〜。あたしの贋作は精密この上ないんだから、むしろ本物以上だよ」

 全員、いや、それはない。

 と、首を横に振る。

 秋菜がムキになって、

「なら、試してみようよ! 実験よ実験! 本物がいいか、贋作がいいか!」

 すると春海が馬鹿にしたように、

「フンッ」

 と鼻で笑い、立ち上がると突然、我輩たちの前までやって来て、

「アタシのピノはどこっ!? どこよどこよっ!!」

 と喚き散らす。が、

 すてにピノは無い。

 どうやら秋菜の贋作うんぬんより、

 ピノのほうが余程大事と見える。

 ピノピノとまるで魂の叫びのように騒ぐ春海に竜破が、

「いや、そんな事を、いまさら言われても、なあ」

 巡が。

「もう、とっくに食べ終わって、箱しか残ってないわよ」

 炎華が、

「箱に香りが残ってるかもしれないわね」

「ニャフン、フン(早いもの勝ち)」

 我輩は炎華を支持する。

 七美が、

「あの、春海、アイスはあたしが、あとで買ってくるよ」

 春海が、

「アタシはアイスが食べたいんじゃない! みんなのさもしい、こころ根がイヤなんだよ! もう帰る!」

 と言ってサッサと帰ってしまった。

 小柄な男子も春海のあとを追うように出て行く。

 秋菜が、

「あらあら、キャンバスも出しっぱなしで、仕方ないわね〜」

 言いながら、春海の絵、イーゼル、キャンバス、油絵の道具などを控室に運んでいく。     

 なかなか面倒見の良い秋菜である。

 七美がアイスの箱や他のゴミを捨て、帰り支度を始める。

「今日は春海が先に帰っちゃたから、あたしが鍵を掛けときますね、部長」

 この時期でもまだ寒いのか、七美は手袋をつけた手で鍵を持ち、冬子にそう話す。

 冬子が、

「そうして、あたしと秋菜は先に帰るから」

 二人は美術室を出て行った。

 炎華、竜破、巡も部屋を出る。そして、七美が鍵を掛けた。

 七美が、

「職員室で鍵を返してきます」

 巡が、

「あ、私それを見た事ないから、一緒に行くわ。どこに鍵を置くのか、見ておきたいの」

 竜破が、

「そんじゃ俺も付き合うわ」

 炎華が、

「なら私も行くわ」

 と、なし崩し的に残った全員が職員室へ行く事になる。

 炎華が、

「春海は、いつも遅くまで残っているのかしら?」

 七美が、

「普段は夜八時ごろまで残って描いてるそうです。家では描けないから仕方がないんです」

 炎華が、

「親は絵を描くのを反対している。という事かしら?」

 七美がうなずく。

「春海の父親は厚生省のキャリア官僚に春海を嫁がせるつもりなんです。

 婦女子に絵なんて必要ないって、いつも言ってるんです。

 春海が十三歳の時に婚約話が持ち上がって、大変な事が起きた事もありました」

 炎華が、

「自殺でもしたの?」

 七美が仰天し、

「当たりです! さすが美少女名探偵☆炎華ちゃんです!」

 炎華が、

「単なる当てずっぽうよ。それより、その事件の顛末が聞きたいわね」

 七美がその話をするが、さっぱり要領を得ないので、我輩が要約する事にする。


 










 

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