☆29☆
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七美が、
「冬子部長、美術部というより、春海あてに来たお客さんなんです」
秋菜が竜破の絵を覗き込んで、
「あら〜。結構上手いじゃない。基礎はちゃんと出来てるし。でも、あたしが真似するレベルじゃないわね。もう少し個性がないと、贋作は作れないわ」
冬子が、
「秋菜! 副部長なのに贋作ゆーな! まったく、後輩と客がいるのに、真似だ、贋作だって、贋作をネット販売している事がバレたらどうするのよ! 廃部よ! 廃部!」
自ら贋作をバラしている事に気づいてない冬子である。
さらに、もう一人、影の薄い小柄な男子生徒が美術室に入って来て、モゾモゾと動くと、
「あ、あの、このアイスはどうしますか? 秋菜副部長」
と聞く。
秋菜はパンっと両手を合わせ、
「ちょうど良かったわ。余った部費で買ったピノをみんなで食べましょう!」
ピノとはバニラをチョコでコーティングした、一口サイズの美味しいアイスである。
冬子が、
「えっ! 自腹じゃなかったの? 何で部費を使うの! 怒られちゃうじゃない!」
秋菜が絵筆を取り出し、
「見て見て、春海と同じ絵筆も買ってきたんだ〜。絵筆は部費でオーケーでしょ。
心配しなくても大丈夫。
律華先生はそんなに怒らないから」
悪い意味で鷹揚らしい。
竜破が苦笑いし、
「律華先生は生徒に信頼されているな」
巡が、
「悪い意味でね」
炎華が、
「単に利用されてるだけじゃないかしら?」
我輩は、
「ニャフッ!(その通り!)」
と同意する。
炎華が、
「今日はちょっと暑いけど、アイスは融けてないかしら?」
小柄な男子が、
「ド、ドライアイスをいっぱい詰めたので、大丈夫です」
ビニール袋に数箱のピノと、ピノを囲むように、ドライアイスの欠片が埋め尽くされている。
秋菜が控室の小皿を持ってきて、ピノを乗せると机に並べる。
小柄な男子はお盆に人数分の、
紅茶、コーヒー、スプーンを用意して、
ミルクと砂糖の小瓶も持ってくる。
冬子が、
「さあ、みんなでピノパーティーよ!」
と呼びかける。
先程まで秋菜を非難していた張本人が率先してパーティーとか言ってる本末転倒な話である。
七美が、
「春海も一緒に食べようよ」
と、呼びかけるが、春海はキャンバスにかじりついて離れない。
七美が一つため息をつき、
「春海は集中すると周りが見えなくなるんです。あと二時間はあんな調子ですよ」




