☆27☆
☆27☆
竜破が、
「それで、七美の絵は何か、おとなし目になったんだな」
巡が、
「生涯に一度描けるか、描けないかの最高傑作を黒塗りにされたら、私だって立ち直れないわ」
炎華が、
「実際にその絵を見てないから、何とも言えないけど、父親が落書きと判断したのなら、本当にただの落書きだったのかもしれないわね」
春海が、
「あれは本物だよっ! 本っ当に! 七美は天才だったんだ! あの件で、アタシは親父と相当やりあったんだから、最後は命までかけて・・・」
炎華が、
「父親と何か、あったのかしら?」
春海は口をつぐみ、
「ぷ、プライベートな事だから、これ以上は詳しくは話せない」
と言葉を濁す。
炎華が七美を見ると、七美は目をそらして素知らぬフリをする。
炎華が、
「写真でも撮っておけば良かったわね。それがあれば、多少なりとも、本物かどうか分かったでしょうに」
春海は悔しそうに唸る。
七美は知らんぷりを決め込んだ。
竜破が、
「よしっ! それじゃ、たまには俺も絵を描いてみようかな」
巡が疑わしげに、
「竜破に絵が描けるの? アニメを見るのが専門だと思っていたけど」
竜破が、
「こう見えてもデッサンは完璧なんだよ。まっ、子爵の嗜みって奴だな」
炎華が、
「あら、竜破はいつから子爵になったのかしら?」
「うっ!」
竜破がしまった!
という顔つきをし、
「俺は未来の子爵なんだよ。たぶん」
苦し紛れに変な言いわけをする。
炎華が、
「イギリスに行って爵位をもらうしかないわね」
巡が、
「いや、日本人じゃ無理でしょ。そもそも竜破じゃ、逆立ちしても子爵は無理よね」
竜破が、
「そういう事は本人に聞こえない所で話せよな、巡」
巡がニッコリ笑い、
「あら、聞こえるように話したのよ。自分の立場をわきまえるようにね」
炎華が、
「男ならゴチャゴチャ言ってないで、その完璧なデッサンとやらを、さっさと見せなさいよ」
竜破が、
「うう、炎華よ! お前もか! くそう、俺の絵を見て驚くなよ!」
ブルータスに裏切られたシーザーのように、芝居がかった演技をし、猛然と竜破はキャンバスに描き始めた。




