☆2☆
☆2☆
話は事件前までさかのぼる。
今回はいくつかの事件が突発し、大きな事件の前に、小さな事件がいくつも起きている。
最初の事件はいささか、ささいな事件の一つといえよう。
その前に、
とある出会いを記さねばならない。
すべては、ここから始まるのである。
その少女は我輩が記憶する限り、稀の中の稀とも言える、天才少女との出会いであった。
時は春、四月の始めである。
暖かな風に誘われて、炎華が急に、
「たまには絵でも見に行きましょうか、ユキニャン? ほら、何とかって、言うわよね。たしか、芸術の春だったかしら?」
「ニャキ(秋)」
「冗談よ」
そう言って風に流れる髪を押さえながら、炎華が我輩に微笑を向ける。
まるで猫語が理解出来るのではないか? と、つい、そんな錯覚に陥る我輩である。が、炎華は十ニ、三歳のごく普通のゴスロリ少女である。
今の描写は無論、猫語が理解出来ないという点を強調した、言葉の綾であって、
炎華の姿を一言で表現するなら、
造化の神が造りし最高傑作。
美少女中の美少女。
と、説明したほうが適切であろう。
炎華が、
「最近、天才女子高生あらわるって、美術界でちょっとした噂になっているのよ。
春海っていう名前だったと思うわ。
その人の個展が新宿美術館で一週間限定で開かれるのよ。
鬼頭警部がその個展のチケットを贈ってくれてね。
自分は興味がないから炎華くん。君が観に行ってくれと、こう言うのよ。
私も美術にそれほど興味があるわけじゃないけど、今日の暖かな春風と春海がなんとなく重なって。
見に行こうかなって思ったのよ」
いつになく饒舌に話す炎華。
我輩は否とも言えず、炎華につき合い、一路、新宿美術館へと向かった。




