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   ☆11☆


   ☆11☆


 クッキー作りは着々と進み、

 炎華が、

「あら、ホワイトチョコを作っているのかしら?」

 先程のショートボブの少女、酒巻部員に話しかける。

「チョコ入りクッキーにしようと思いまして。普通のチョコでも良いんですが、たまには趣向を変えてホワイトチョコにしました。なにしろ、今日はフォーチュンクッキーの日ですからね。あ、でも、普通のチョコクッキーも作りますよ〜」

 そう言いながらホワイトチョコを薄い板状に伸ばす。

 そこへ竜破の腕が伸び、チョコの欠片を取ろうとするが、炎華のチョップが炸裂する。

「あ痛っ! って、何だよ炎華!? 何でいきなりチョップするんだよ?」

 炎華が氷よりも冷ややかな声で、

「つまみ食いしてる場合かしら?」

 竜破が、

「他にする事ないし、ヒマなんだよ」

 炎華がボールと小麦粉と砂糖と卵を竜破に渡し、

「働かざるモノ食うべからず、よ。クッキーの生地でも作りなさい。私はチョコを砕くから、普通のチョコも使うのでしょ?」

 炎華が酒巻に尋ねる。すると、酒巻が恐れ入ったように、

「ええ、もちろん使います」

 そのあと小声で、

「まさか、才色兼備の美少女だとは。これは、ますます、フォーチュンクッキーを渡すわけにはいきませんね〜」

 と、わけの分からない事をささやく。

 酒巻は低い声なので、

 炎夏や竜破には聞こえなかったようだ。

 酒巻はその後、ホワイトチョコと普通のチョコで何かを作っていたが、床からその様子を眺めている我輩には、何を作っているのか、よく見えなかった。

 他の部員のクッキー作りも、だいぶ進んだようで、いよいよ、クッキーの生地に占いの紙を入れる段となる。

 粕谷副部長が威圧するように、

「占いを入れる者はクジで決めます。これは、クジを入れるさい、クジに変な仕掛けをさせないためです」

 そう言ってクジを引く。

 占いをクッキーに入れるのは酒巻になった。

 太田部長が、

「さあ! こちらが本日のメーンイベント! 占い用紙になります!」

 用紙を厳かに取り出す。

 細長い白い紙に文字が記入されている。

 文字の面を裏にして酒巻に手渡す。

 酒巻は受け取ると同時に、素早くクッキーにクジを挟み込んだ。

 太田部長が、

「占い用紙! 入りました! よござんすね! よござんすね!」

 まるで賭博の掛け声である。

 粕谷副部長が、

「では、これよりトレイ・シャッフルに入ります。太田部長以外は全員トレイに背を向けてください」

 炎華が、

「部長がクッキーに細工するって事はないのかしら?」

 竜破が、

「そこは、さすがに太田部長を信じるしかないんじゃないか? 胴元を疑っちゃ、博打は出来ないぜ」

 炎華、

「それもそうね。私は運頼みの賭け事になんて興味はないけど」

 竜破が、

「信じられるのは己の論理と推理だけ、かい? ま、否定はしないがね。でも、世の中理屈だけじゃないんだな、これが。ランダムな数字は時に論理を超える力がある」

 炎華が、

「それを運と言うのでしょう?」

 竜破が、

「もう少し格好よく、運命、とか、奇跡、とか言って欲しいね」

 炎華が、

「くだらないお喋りは終わりよ。シャッフルが終わったわ」

 太田部長が、

「それでは最後の工程。シャッフルした五つのトレイを五つのオーブンにセットするわよ! その間、今度はあたしが後ろを向くわね!」

 部長は後ろを向いた。

 どれにフォーチュンクッキーが入っているのか分からないよう。徹底していた。

 横長のテーブルには五つのトレイに入ったクッキーがズラッと並んでいる。が、もはや、どれにフォーチュンクッキーが入っているのか、さっぱり分からない。

 粕谷副部長が、

「さあ! この日のためにオーブンはピカピカに掃除しておいたわ。ピカピカのオーブンに、トレイを入れるのよ! フォーチュンクッキーを焼き上げましょう!」

 酒巻は左から四番目のオーブンにトレイを入れた。

 炎華と竜破、それに律華は部外者なので、それを黙って見守っていた。

 竜破が、

「やっと、三時のオヤツか。えらく手間取ったな」

 炎華が冷たく、

「竜破は何一つやってないでしょう。間違ってもフォーチュンクッキーを引くんじゃないわよ」

 竜破、

「いやいや、それこそ運次第さ」

 炎華が、 

「竜破は賭け事が得意なんでしょう。だったら、あのショートボブに花を持たせてあげなさいよ」

 竜破が、

「おいおい、俺にイカサマしろってのか? 美少女名探偵とも思えない言動だな」

 炎華が、

「善意のイカサマなら許可するわ」

 竜破が、

「ま、出来なくも、ないがな」

 竜破のドヤ顔が炎華の癪に障ったのか、

 炎華が、

「やっぱり却下するわ。厳正に運を天に任せましょう」

 竜破が、

「どっちなんだよ!?」

 炎華が、

「そろそろ焼きあがるみたいよ」

 竜破が、

「ようやく食えるな」

 という事で、軽食部と、その場にいる全員で楽しくクッキー・パーティーと洒落こんだ。

 律華は数個食べたあと、

「今年も当たらなかったか」

 と肩を落として出て行った。

 その後、太田部長が不審げに、

「ないわね」

 粕谷副部長が、

「たしかに、ないですね」

 酒巻が、

「何でないんでしょうか? みんな楽しみにしてたのに、誰かフォーチュンクッキーを当てた人はいないの?」

 が、他の部員も口々にクジは無いと言う。

 炎華が、

「どういう事かしら? 確かに、クッキーに入れて焼いたはずなのに、占いの紙が出てこないなんて」

 竜破が、

「良かったじゃないか」

 炎華が、

「何がよ?」

 竜破が、

「フォーチュンクッキー消失事件。美少女名探偵☆炎華ちゃん、お得意の不可能犯罪じゃないか」

 炎華が、

「謎を謎のままにしておいたほうが、賢明だと思うのだけれど」

 竜破が釈然としない顔つきで、

「何だよ、何か歯切れが悪いな。炎華が謎を解かないなら、俺が解いちまうぜ」

 炎華が竜破を睨みつけ、

 肩をすくめ、

 諦念の微笑を浮かべる。

「仕方ないわね。女の子の問題は女の子がなんとかしないとね。私が嫌われ役になるわ」

 竜破が、

「何だよ、その口ぶりじゃ、犯人も手口も分かってるって言うのか?」

 炎華、

「当然でしょ。つまらない、ただの手品よ。ぃまから種明かしをするわ」

 そう言って炎華が指差したのは、



 









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