武王の遺言 次代王決定戦開幕
誇り高きマギア王国の王たる『武王』亡くなった。
その一報はマギア王国を震撼させた。
そして彼の遺言もまた王国を震撼させた。
彼の遺言はただ一言「この国で最も強き者をこの国の次代王とする!!」
その遺言に基づき、マギア王国の重鎮たちは次代王を決定する武闘大会の開催を決定する。
☆
「ちょちょちょちょちょ!ダリア!今なんて言った?」
「武闘大会に出場する」
「いやいやいやいやいやいや!!君が出ちゃダメでしょ!!!」
「何で?参加条件は『己が強者だと思う者』でしょ?私が参加しちゃいけないなんてルールはない」
「よく思わない人だっているでしょ!?」
「そんな奴、吹き飛ばして、私が女王になった後にこの国から排除すればいいでしょ?」
「暴論!!」
「何言ってるの?女王の命令は絶対!!よ。命令を聞かない奴は不敬罪で打ち首にすればいいわ」
「暴君!!」
世紀末な発言ばかりするダリアに呆れたが、結局僕は彼女を見送ることに決めた
「じゃあ行くわ」
「いってらっしゃい」
「何言ってるの?ユーリ。貴方も行くの!!」
は?
「は?いやいやいやいやいやちょっと待って聞いてないよ!?」
「それはそうよ。だって一言たりとも言ってないもの」
「鬼、悪魔、ダークエルフ!!」
「そうよ、私はダークエルフよ!!」
「そういう意味じゃないよ!!」
叫ぶ僕を見もせず彼女は首都中央部の方向を凝視する。
「それじゃあ行くわよ!!開催場所は・・・首都の中央闘技場だったかしら?」
「ねぇ話聞いて!!頼むから話聞いて!!」
「レッツゴー!!」
「ぎゃあああああ!!」
話を聞かない暴君な彼女を僕の襟首をつかみ、風魔法で空を飛び、中央闘技場を目指す。
☆
ここはマギア王国首都中央闘技場
そこには数多の強者が集結していたが、その中でひときわ目立つエルフがいた。
「おいおい、マジかよ。王女様もいるじゃねぇか」
「当たり前だろ。王族も条件の範囲内だ。ここにいて当然だろ」
そう、彼女は王族。名はソフィア・ヴァンヤール・リヨース・アールヴ。
今、彼女は次代王候補筆頭である。
彼女は目を閉じ開幕の合図を待ち続ける。
そんな中、闘技場上空から何やら小さな、かすれるほど小さな声が聞こえる。
その声はどんどんどんどん大きくなり、次第に闘技場中央に小さな影が現れ始め、影と音がどんどん大きくなっていく。
ソフィア含む、闘技場にいるものすべての視線を集めるそれは人影だ。
「おいおいおいおい!!おちてくるぞ!!」
「退避!!退避ぃい!!」
どごーーーん。
土煙が舞い、石の粒が周囲に飛ぶ。
土煙の奥から人影が見え、正体が分かりかけていく。
「ふー。危ない危ない」
「ぁぁぁぁああ・・・・」
「ユーリが死んだぁ!?」
「・・・君・・・・の・・・せい・・・」ガクッ・・・
快活なダークエルフとその場にぶっ倒れる一人のエルフ。
銀色の髪、褐色の肌、サファイヤのごとく蒼き眼、これから戦うにはいかんせん軽装過ぎる衣を着ているダークエルフ。
見るからに貧弱そうな体系をしつつも、一目見ればそれなりの値打ちがあるローブを着た、ぶっ倒れているエルフ
周囲の視線が二人へと注がれる。
「おい、あいつってまさか!!」
「あいつは!!」
「ダリア!ダリア・テレリ・デック・ヴァ―ル!?」
そんな周囲の声が耳に入ったのか、ダリアは周囲をぐるりと一瞥し、一人のエルフを目にする。
「ん?ソフィア?ソフィアだよね!」
「チッ」
王族に似つかわしくない舌打ちをした彼女はダリアを睨み、問う。
「なぜ貴様がここにいる?」
「なぜって、闘技大会に出場するからだけど?」
「正気か貴様?」
「この私にそんな大口を叩くソフィアこそ正気?大丈夫?頭打ってない?治癒魔法でもかけてあげようか?」
青筋が浮かぶソフィア、軽薄そうで意地の悪い笑みを浮かべるダリア。
二人の間にあまりにもひどい空気が流れ始める。
そのとき
「静まれぇえええええ!!!!!!」
険悪な空気を流す二人を含んだ参加者たちが声の方へと振り向く。
険悪な空気が一掃したのは言うまでもない。
「これより、次代王を決定する武闘大会の開催を今は亡き武王の名をもって宣言する!!
集まりし強者たちよ!!死力を尽くし、次代の王の栄光を手にせよ!!!!!」
「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」」
武闘大会が始まった
武闘大会の最初の挨拶なんていらないくない?という一心で挨拶を撤去。