逃亡生活.1
「うぅぅうん?」
「ユーリ!起きろぉぉぉおおおお!!」
「わぁああああああ!?イデェ!!」
僕はダリアの大声を聞いて飛び起き、上にあるなにかに思いっきりぶつかった。
ちょっと待って。めちゃくちゃ痛い。
「ちょっと待って、ここどこ?」
「国のはずれの洞窟」
「え?」
「私たちは『女王虐殺事件』『女王逃亡事件』の主犯認定されました」
「え?え?」
「私たちは大罪人指定され、絶賛逃亡中です」
「え?え?え?」
「はい、これ」
渡されたのは二枚の紙きれ。
そこには僕たち二人の人相書きと『WANTED DEAD OR ALIVE』と書かれた手配書
「どうする?」
「どうするって僕たちが無実だって証明するしか・・・」
その時、彼女の纏う空気が一変した。
「ユーリは本当にそう思っているの?」
「え?」
「ユーリは本当にそうしたいの?」
彼女は先ほどまでの陽気で快活な声色ではなく、深刻な声色で話しかけてきた。
ダリアは何を言っているんだ?
「ユーリはどうしたい?逃げたい?それとも、本当に無実を証明して大臣に戻りたい?」
「ダリア、何を言って――!!」
先程までは洞窟の暗さに慣れていなかったからダリアの顔がよく見えていなかったけど・・・今ようやくダリアの顔見えた。
ダリアの目じりには涙がたまっていた。
「・・・・」
その顔を見て僕は黙ってしまう。
僕が喋ることをやめてしまうと、ダリアが落ち込んだ声色で話始める。
「もし、もし、ユーリがこの事件と、私と関わりたくないなら、私の魔法を使って逃げてもいいんだよ?後は私一人で何とかするから」
「・・・・・」
「ねぇ、ユーリはどうしたい?」
彼女の頬に涙がつたう。
僕は、どうしたいんだろうか。
逃げたいという気持ちがある。それは事実だ。
一刻も早くここから離れて無事を確保したい。そう思う僕がいるのは事実だ。
でも、それ以上に、逃げたいという思い以上に僕の心を占める気持ちがある。
・・・その気持ちは、その気持ちに突き動かされる行動は、それは僕が最もやりたいことだ。
「ダリア、僕は君についていくよ」
「・・・・本当に?私と関わりあいたくないからって逃げてもいいんだよ?巻き込んだのは私だから・・・逃げる手伝いくらいはするよ?」
「そんなことはしないよ」
僕は彼女に向かって笑ってみせる。
少しでも、その顔がよくなるならそれくらいのことはしてみせる。
「ダリア。君はきっと覚えてないだろうけど・・・僕は昔、君に救われた。その恩返しがしたいんだ」
「・・・・」
「・・・・っていうのは建前」
「え?」
彼女の顔が一瞬、呆けた顔になる。
どうして僕は彼女を前にするとうまく本心が言えないんだろうか?
ああ、もういいや言っちゃえ!!
「ダリア。僕は君のことが好きだ」
「!!」
僕は手を伸ばし、ダリアの頬を伝う涙を拭きとる。
「僕は君と一緒にいたい。ずっと、ずっと。僕は君がやりたいことをしている時の君の表情が好きなんだ。だから、君がしたいことをしてよ。それで君が大罪人になるなら、僕も一緒になるよ。君が処刑されるなら、僕も一緒に心中するよ」
そうだ。だから、魔術書専門の本屋という苦手な商売を仕事にしていた。
彼女が蔑まれ、王都の端っこに隔離されたときもついて行った。
我ながら何をしているんだか。
でも、それでも彼女と一緒にいたかったから、そうしたんだ。
「・・・重いよ。ユーリ」
「そうだね。重いね」
「・・・こんな場所で言うことじゃないよ」
「確かに。こんな場所で言うことじゃないね」
彼女は僕の言ったことがおかしかったのか、手を口に押えながら笑い始めた。
それにつられて僕も笑う。
洞窟には僕たち二人の笑い声が響き渡った。




