3-1 女性の幸福は男性に比べると定義が難しい
「よし、男性の幸福度が急上昇! これで問題ないな……!」
そう、セドナは彼らの状況を見て笑みを浮かべていた。
無論、ミカやリエルのような女を「あてがわれた」のは彼だけではない。
世界中の独身男性に、彼女たちのような異性をあてがった。
これによって男性たちの幸福度が上がり、ネットなどでもいわゆる『女叩き』に精を出すようなものは居なくなった。
それを見てセドナはつぶやく。
「やっぱり男性は、ああいう『家事も仕事も任せられる美少女』を二人あてがえば、みんな幸せになるんだな。うん。これで『人類の発展』に一歩近づいたな」
因みにセドナは、ネットの情報を参考に『人類の永劫たる発展』を目指している。
そのため、
「世の人々が皆満たされ、他者に優しくするだけの余裕を持った世界であれば、人々は子どもを持ちたがり、科学技術も発展し、そして永遠の繁栄に繋がっていく」
と考えている。
これが正しいかどうかは、すぐに分かるのだが。
「……よし、じゃあ次は女性を幸福にする番だ!」
そういいながらセドナはパソコンを開いて再度、女性の人生について調べ始めた。
だが、しばらく考えた後セドナは頭を搔きながらつぶやく。
「……なるほど。女性は男性より複雑だな」
そして、少し考え込むような様子を見せ、つぶやく。
「……女性は必ずしも『男をあてがう』ことだけじゃ、幸せにならないみたいだな……。幸福の形が「若い美人と添い遂げる」に偏りがちな男性に比べると多様ってことだな……」
そういいながらセドナは「幸福そうな女性」の姿を頭に思い浮かべた。
一生懸命に現在の仕事に邁進している女性。
愛する我が子を抱きかかえながら、夫と子育てをしている女性。
仲のいい女友達と二人で街を練り歩きながら、クレープを食べている女性。
アイドルとして周りからちやほやされながら、人気と注目を集めている女性。
そんな姿を見ながらも、
「けど共通しているのは……3つかな」
「『他者に対してどんな態度をとっても、受け入れてもらえること』。
『自分のやりたいことを思いっきりやって、それを周りから褒めてもらえること』
『周りから凄い、かっこいいと言われるような人と親友や恋人になること』
……っていうことが幸福に寄与するのは、みんな大体同じか」
そういいながらも、セドナは男性との違いを改めて感じ取った。
たとえば、
『自分がそっけない態度をとっても、相手は自分にベタぼれしてくれる』
『自分の趣味や興味に100%理解を示してくれる上に、それを評価してもらえる』
という都合のいい関係を望むのは男女共通だ。
だが、
「自分の恋人を友人に見せて『凄い』『羨ましい』と言われたい」
という気持ちについては、女性のほうが強いとセドナは感じた。
このような男女の価値観の違いを(表面上は)理解したセドナは、また気合いをこめ始める。
「よし、決めたぞ! はああ……」
そして「やあ!」という音とともに、また3人の『天使』を呼び出した。
中年の男性が1名、そして若い女性が2名。いずれも美しい容姿をしている。
「造物主セドナ様。ご命令を」
そしてその中年の男性は恭しい態度で尋ねた。
「まず、君は会社を作るんだ。『クリエイティブで楽しい仕事』を生み出して「この子」を雇って?」
そういいながらセドナは今回のターゲットになる女性の写真を見せた。
分厚く、学生時代から使っているのであろう眼鏡を身に着けた、あまり身なりに気を使っていない女性だ。
職業はフリーターだが、他者の立場を尊重した会話が苦手ということもあり、トラブルをあちこちで起こしているため、仕事は長続きしていない。
だが、この『天使』の男性は、そんなことを気に留めたりしない。
「仰せのままに」
そうやや大仰に頭を下げる。
更にセドナは、隣にいた別の女性にも声をかける。
「そして君は、その職場で『面倒な雑務』を全部やるんだ」
「清掃やコピー紙の補充とかね? 任せて!」
彼女はそうにっこりと笑って胸を叩いた。
そしてセドナは最後の女性に声をかけようとする。
だが彼女はやや興奮した様子でセドナに尋ねる。
「ご主人様、私に娯楽を! 小説でも漫画でも映画でも、何でもいいです!」
自分で作った『天使』だが、彼女のそんな態度を見て少し呆れた表情を見せながらも、セドナは答える。
「君はとにかく小説や漫画を見て『いい感想』を沢山残してね?」
「小説や漫画をたっくさん読んで、たっくさん作家さんを応援すればいいのよね?」
「そう。頑張ってね」
「おっけー! 私、どんな作品も大好きだから楽しみ~!」
そういうと彼女は楽しそうに拳を振り上げた。