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世界

「現地時間午後7時26分、ミュクロ軍がクルディスタンを侵攻しました。」

社会主義国家ミュクロ連邦、ルーダリアと並ぶ大きな国土を誇るが、ルーダリアと違い富の分配をスローガンにする国家だ。実態は国民が共有していた富を上層部が占領するので、国民は飢餓状態になっている。社会主義の独裁国家だ。ルーダリアは世界の覇者として社会主義を恐れている。

「クルディスタンの侵攻はあってはならない侵略行為。我が国のルーダリア軍はクルディスタンに軍隊を派遣する。」

ルーダリアでは社会主義者は迫害を受ける。社会主義だと分かれば、劣悪な刑務所などに送り込まれる。経済的に豊かな資本主義。下級階級は差別を受けるものの、収入が高くなればなるほど階級が上がる。収入と社会的信用が階級を決めるのだ。

「業務用スーパーの食品、安くて良いな。」

「これだけ入ってこの値段って凄いな。」

「今日もバーガーキッチンでビッグバーガー買ったわ。安くて助かる。」

ホームレスや極貧な家庭で無ければ、下級階級の食べ物に困ることはあまり無い。しかしほとんどが添加物を大量に使った加工食品、ファーストフードをたくさん食べているのが現状だ。収入が低くなればなるほど不健康な食事になる。

「ハムなどに使われる亜硝酸ナトリウムなどの発癌性がある添加物の代表例です。」

中流階級以上の学校では危険な食品添加物について必ず授業で学ぶ。しかし下級階級の子供達が集まる学校は彼らとは教育内容の差異がある。危険な食品添加物についての教育は行われない。暗に貧乏人は社会の矛盾には気がつかず安いサービスに享受して、社会の駒になるように国は仕向けている。


アランとジェームズは第4区に行った。第4区は国際空港と隣接する区だ。

「辛かったな。アラン。」

アランの父親は他界して、4区で葬式が行われた。

「ホームレスと言う理由で葬式に行けないなんて信じられないな。」

「会社が倒産して、親父までいなくなるなんて。こんな悪趣味な運命誰が決めたんだよ!」

アランは暴れていた。

「アラン、アラン!」

ジェームズはアランをおさえた。

「アランの運命を決めるものがいるのであればそいつは悪趣味だな。」

彼は感情が乱れるアランを抱きしめた。

「今になって思うけど、ニコラスのように俺もあの独裁政権を潰したいと思う。父親が亡くなることは避けられない運命でも、葬式に行けないなんて受け入れがたい。この政治体制に終止符を打ちたい。」 

父親の死と理不尽な扱いで、アランはハミルトン市民無職化計画を遂行する覚悟が出てきた。

「似顔絵を描きますけどいかがですか?一枚10ドルです。」

街を通り行く人達は画家の女性を無視した。

「どうか一枚だけでもどうですか?」

「話しかけるな!」

女性はゴミを投げられた。

「君、大丈夫か?」

ジェームズが女性に声をかける。

「こんなのよくあることよ。あんた達、ホームレス?」

「見れば分かるだろうな。残念ながら似顔絵を描いてもらえるお金など無い。」

「それならもうあんた達にはようは無いな。」

女性は二人を冷たく突き放した。

「他に仕事はしてないのか?」

「画家一つで活動してるのよ。悪い?」

「素晴らしい活動だな。」

「その状況だと絵が売れなくて困ってるんだな。」

「勝手なこと言わないで。私のことを同情するなら、お金を払うなり、私を有名にするなりして。そんな無責任な同情はいはないから。」

大声で言った。

「ああ、俺は君の人生の責任を負えるような人間じゃないよ。」

「何で仕事はしないんだ?貯金で生活してるのか?」

「私は偉そうに搾取するような人間のもとで働くような人間じゃないの。下級階級の人間がつける仕事なんて反論が許されない召使いのような仕事ばかりよ。安い時給で高価なサービスを提供しないといけない。そんな仕事やってられないわ。」

彼女はケイリー。社会に希望を持てない売れない画家をしている。

「俺達もこんな社会が気に食わない。だからこれを受け取ってくれ。」

無職エージェントの名刺を渡した。

「何この紙くず?いらないわ。私はお金払わない人間にはようは無いの。分かったらならここから離れて。」

「そんなこと言うなよ。」

「俺達はもうここには来ないけど、名刺だけは受け取ってくれ。俺達はこの独裁政権を潰す組織だ。」

「次話しかけたらあんた達を密告するわね。」

「ヤバい逃げるぞ!」

ジェームズはアランの手を引っ張り、地下鉄まで向かった。

「彼女が誰かも知らずに、名刺を渡すのは不味い。」

「密告されたらニコラスの取り組みは水の泡だぞ。」

ジェームズはアランに言った。

「彼女も味方に出来そうだと思ったから。」

「売れない画家に同情してるかもしれないが、彼女の人生をどうにかすることまで俺達は出来ないんだよ。目標は売れない画家を支援することじゃないんだぞ。」

「分かってる。だけどそんな人達を放って置けないんだ。」

「何が最善ななのかよく考えろよ。」


「よし、この後リモート会議だ。」

男はいつも通り、仕事をして、中流階級らしい生活を送っていた。そして呼び鈴がなる。

「警察です。スミスさん、署まで同行を願います。」

男は警察に連行された。

「これはどう言うことだ?証拠がある限りは言い逃れは出来ないよな?」

写真には男が数人のホームレスを助ける動画だった。

「街の治安を乱すホームレスを助けるのはどう言うことなんだ?」

「は?こんなことしてません!誰かのいたずらですよ。」

「こんなにはっきりした証拠を前に言い逃れをするな!」

「言い逃れも何も俺は何もしてないんです。」

「この国を混乱させるための陰謀だろ?正直に答えたほうが見のためだぞ。」

男は警官にビンタをした。

「警官に暴行を加えるなんて、これは罪が重いぞ。」男は懲役5年を迫られたが。持ち金を全部払いすぐに保釈された。他にもこのようにホームレスを支援をしたと疑われていた人物も数人いた。

「ハンス、よくやったな。お前の画像生成。いや動画生成がこんなに役に立つと思わなかったな。」

「これくらいなら大した事ないよ。」

ハンスとニコラスが行っていた作品は人工知能の画像生成を利用して、元々存在するはずの無い証拠を作り上げることだった。それを誰かがでっち上げたという強力な証拠がなければ言い逃れることは出来ない。

「こんなに能力があれば仕事の一つや2つくらいあると思うけどな。」

「結局ソフトを使っているから、僕の業績は評価にならないよ。」

「そんな暗いこと言うなよ。今回の作戦、お前の活躍のお陰で良い方向にいったんだぞ。感謝してるからな。」

ニコラスはハンスの為に料理を作った。

「ほら、今回のお礼だ。あの食材の量だとこれくらいしか出来ないけどな。」

料理をテーブルに置いた。

「でもすごい美味しそう。」

ハンスは彼の料理を食べる。

「どうだ?」

「すごい美味しい。」

「どんどん食べろよ。」

「なんと説明したら良いのか分からないけど、生きてて良かった。こんな料理食べれて良かった。」

そのセリフを聞いてニコラスはハンスに笑いかけた。

「もうあんな馬鹿な真似はするじゃないぞ。」

「もう、命を落とすことなんてしないよ。」

ニコラスは完全じゃなくても、少しずつハンスを変えた。

「最近は親と食事するようになった。今までは何もかもあの部屋に引きこもってたけど、自分で世界を閉ざしちゃいけないなって思った。」

彼の変化で両親からも笑顔が戻った。もちろんニコラスが家に上がっていることは知らないが、ハンスが少しでも変わろうとしているのは分かった。徐々に人に心を開きはじめた。

「学校ではたくさん馬鹿にされたり、社会でも馬鹿にされたから簡単に人に心を開くことは難しいけど、ニコラスならちょっとは信じられる。」

「お前が思っているように世の中、洗脳された奴らばかりじゃない。そう言う奴も見つけるのが大事だな。」


「君達には監視任務を与える。」

隣国のテレジア共和国では国が子供を国家のスパイになるように教育させた。子供は国の未来を担うが、テレジア共和国では子供は国家に思うようにコントロール出来るサイボーグとしか思っていない。

「良いか。これが隣国の超資本主義国家、ルーダリア国の現状だ。富の独占を重視した結果がこの貧富の格差だ。誰かが富を独占したらこの国のように格差が生まれる。テレジア共和国では皆一人一人平等に富を分け与えてます。この国は世界中を資本主義国家にする敵国です。」

この国もミュクロのような社会主義国家で、ミュクロ首都に本部がある世界社会主義連合の加盟国だ。テレジア共和国はつい最近まで共和党政権だったが、共産党員が政権を奪還するためにクーデターを起こして、再び共産党政権に戻った。それから一党独裁政権だ。ルーダリアとは国境を封鎖していて、国全体が城壁に囲まれているので、謎に包まれている。この国も実際は国民は全員農作業をさせられた。国に歯向かう国民は街中で公開処刑された。その実態はお隣のルーダリアの国民も知らない。


「今回はずいぶん多くの市民を無職化したわね。」

「これもハンスって奴のおかげだ。凄腕の持ち主だ。」

「そのハンスってやつに一度あってみたいもんだな。」

オランウータンのエドワードは言う。

「セントラルタウンの人間だから、こんな所に来ることはないよ。」

「パソコンの操作を教えてもらいたいんだ。」

「そのパソコン壊れて、使い物にならないぞ。どこで見つけたんだ?」

「分解出来ないゴミの山から見つけた。」

「ここにある機器は使い物にならんぞ。」

「誰かリペア出来る奴がいるなら良いけどな。」

ミアとカルラが戻った。

「どうだった?」

「ターゲットを見失って今日は作戦失敗よ。」

「明日は成功させるつもりだわ。それにしてもニコラス、あんた作戦成功してるね。この調子で私の腕の紋章の謎も解ければ良いけど。」

トラッシュシュタットの人口は少しずつ増えようとしていた。人が増えても、無職エージェントのメンバーはトラッシュシュタットの5人とハンスだけだ。他の人達はまだ信用を得られていない為、作戦をともには出来なかった。

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