表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

路上生活

月が綺麗な夜、コートを着ていてもとても寒い夜だった。

「マジで寒すぎる。この寒さクレイジーだぜ。」

路上生活を余儀なくされたニコラスは寒さで震え上がっていた。

「それにしてもこの街、ホームレスってどこで暮らしてるんだ?全くいないけどな。」

ニコラスは仕事を探そうとしても、全然見つからなかった。

「クソ!ベンチスロープがついてて寝れないじゃ無いか。」

彼は公園の茂みで寝ようとした。

「お前、何でそこに寝てるんだ。」

彼は地域の警察にむち打ちされた。

「ただ茂みで寝てるだけだろ。」

「お前のようなホームレスはいつ犯罪を犯しても可笑しくない。だから街の治安のために罰を与えてるだけ。」

「そんなことまかり通るとでも思ってるのか!」

さらに彼は酷くむち打ちされ、さらに顔面を殴られた。

「この国を守る為の仕事だ。悔しければ、この現状が抜け出すことだな。」

「お前、ここで寝るんなら逮捕するぞ。」

「そんなの不法逮捕だ!」

彼らは手錠を持っていたので逃げた。

「何がどうなってるんだよ。ホームレスには人権が無いって言いたいのか?」

彼は走りながら考えた。彼は世間を知っているようで、よく知っていなかったことを。

「ホームレスになったらこんな運命が待ち受けてるのか。」

「こいつ臭すぎ!」

「石投げてやろうぜ。」

地元の不良達に石を投げられた。

ルーダリアは表向きは平和を唄う国家だ。しかし実態はそうでもない。ホームレスは治安維持のために警察が彼らに暴力を振るっても良い法律が制定された。もし彼らが逆らったりした逮捕される。そしてホームレスを助けたり、援助する人達も逮捕の対象になる。この国ではホームレスになることは自己責任なのだ。ホームレスが唯一就寝を許可される場所は人がいない廃墟、もしくは劣悪なゴミ捨て場でのに就寝が許される。学校なのではこうならない為にしっかり勉強するように教育されている。 

「先生、直接罪を犯してないのに、ホームレスを無差別で隔離するのは間違ってると思います。この国のやってることはジェノサイドと何も変わらないんじゃないんですか?」

「やめろ、殺されるぞ。」

「おかしい事をおかしいって言って何が悪いの?」

そして授業中、国に対して反骨精神を見せる場合、家族全員体罰を受けることになる。

「やめてください!」

「痛いよ。」

「国家に対しての忠誠心が足りないんだよ!」

発言した子供の家族は警察に暴力を振るわれる。

「痛い。愛国心なんてクソ喰らえ。」

「ニック喋らないで!」

警察にさらに暴行を受ける。

「皆さん、これからビデオを見せます。」

それは警察がニック家族に暴力を振るう映像だった。

「皆さん、これは暴力のように見えますが暴力ではありません。治安を維持するための矯正です。」

子供達は衝撃を受けつつも小さい時からそう言う教育を受けていたので、もはや可笑しいと思わなくなった。

「国家に反逆することは戦争を意味します。世界平和を維持するためには何が必要か答えられる人はいるかしら?」

一人の生徒が答える。

「それは国に忠誠心を示すことです。国民が一致団結して忠誠心を見せれば、どんな敵とも戦えるのです。」

「よく出来たわ。よく言えたあなたには高級デザートを給食で渡すわ。」

国に忠誠心を示せば示すほど特権や恩恵を受けられる。ニコラスは学生時代怠け者だったので授業をよくサボったりしていたので、国家や世界情勢についてよく知らなかった。授業をサボっても別に罰則は無い。授業をサボれば社会もろくに知らない搾取しやすい都合の良い駒を作れるので、国としてはサボっても打撃など無い。罰則があるのは国家に逆らうことだ。

次の日も夜も寝る場所を探していた。

「今日は地下鉄に寝るか。」

地下鉄は寒さを凌ぐのに最高の場所だった。

「助かった。」

「キャーー、ホームレスよ!」

通行人がニコラスを殴ったり、蹴ったりした。

「警察呼ばないと。」

そう言った瞬間ニコラスは全速力で逃げた。警察に捕まれば、それも劣悪な環境に収容される。0.5畳の牢屋に入られる。トイレも全てそこですませなければいけない。映画とかでそんなシーンは見たことあったので、ニコラスはそんな暮らしをしたくないと思い全速力で逃げる。

「捕まりたく無い。」

彼は走っていくうちに転んだ。

「ホームレスが転んでるよ。」

街を歩く人はホームレスを馬鹿にするような眼差しで見た。

「お兄さん、こんな所で何してるの?」

ニックという少年がニコラスを見た。

「もしかしてホームレスなの?」

「何でこんな惨めなホームレスなんかに声をかけるんだ?」

「困ってる人は放置出来ないから。」

ニックは中学生ながら、ルーダリアの社会体制に疑問を持っていた。彼は中流階級の生まれの少年だ。

「最近この国が可笑しいことに気がついたよ。」

「今さらなの?お兄さん、勉強苦手なタイプでしょ?」

「ついに中学生のガキに言われてしまったか。ああ、勉強は苦手だ。努力も続かない。モデルとして生きるつもりだったが世の中はそんな甘くなかった。あん時の俺は先が見えてなかったんだよ。10年間は色んな女に養って貰って、ついにその女達に家を追い出されてホームレス生活さ。」

「お父さんやお母さんはいるの?」

「絶縁してるんだ。あの両親の元にいたら持ち金全部使われるから、16の時に家出したよ。だいたい酒か出来もしないギャンブルさ。それよりお前、こんな俺なんかに声かけて大丈夫なのか?この国の法律で治安維持の為にホームレスを支援するのは禁止なんだぞ。お前、家族全員罰を受けるか酷い場合は劣悪な刑務所に入れられるんだぞ。分かってるのか?」

「お兄さん、家族かなんかになったつもり?そんなの授業受けてれば誰でも知ってるよ。」

「分かっててやってんのか。良いか。賢く生き残る為にはそのルールと折り合いつけて生きていかなきゃならないことだってあるんだ。」

「それって本心なの?本当は表向き平和なこんな腐りきった社会を変えたいんじゃないの?そうとう追い詰められてるみたいだね。僕の家、ホームレス一人に分けられる食料があるから、今度公園で食料渡すよ。可笑しいのこの国だけじゃない。世界全体が事なかれ主義の社会なんだよ。国の政府はもっと残酷な事実を隠してる。」

「残酷な事実?」

「知りたいようだけど、おじさんちょっとは勉強したほうが良いよ。調べれば調べるほどこの国の闇がどんどん浮き彫りになるから。」

「分かったよ。今さらながらこの国はクレイジーさ。」

話してるうちに彼の母親がやって来て、ニコラスにビンタした。

「うちの子供に何をするの!誘拐かなんかでもするの?」

母親は護身用のナイフを向ける。

「ニック、あんた何でまたこんな馬鹿なことするのよ!」

母親はニックをビンタしようとした。

「おいおい、ニックのお母さん。怒りの矛先をニックに向けてどうするんだよ。俺をボコボコに殴ろうが逃げれば良いから良いけど、家族という集団は努力しても簡単に逃げられるもんじゃないんだぞ。そんな風に毎日叩いてちゃ誰も信じられない大人になるぞ。」 

彼はニックの母親の腕を抑えながら話した。

「汚いわね!浮浪者が偉そうに私に説教するわけ?ニック、この人は国の秩序を乱す人なの。それにこんな反逆児みたいなことしたら私達全員逮捕されるのを分かってるの?」

「だから何?だってこんなのが平和とか可笑しいことじゃん。」

「良いから。こんなことしてたら次は逮捕なのよ。そこの浮浪者!二度とニックに近づくんじゃないよ。」

母親はニックを連れてその場を去った。

「未来が楽しみなガキだな。」

そう言って、ネクストタウンを離れた。ネクストタウンは中流階級以上が住むことが許されている地域だ。ニコラスがヒモ生活していたのはセントラルタウンと言う地域。セントラルタウンは上流階級階級のみが住むことが出来る地域。

「ダークマリン久々だな。」

中流階級と下級階級が混在する地域をシャドウ・マリンと言う。

「第16区は相変わらず変わっていないな。」

階級に関わらず、各地域に移動することは可能。掃除の仕事で下級階級がセントラルタウンに行くこともよくある話だ。鉄道網が発達してる為、どの地域を速く自由に行き来が出来る。

ダークマリンは第1区から第24区で構成されている。第1区と第14区と第24区が中流階級の住む地域。第2区と第9区、第11区と第23区が下級階級と中流階級の人間が共存する地域。それ以外の地域は下級階級のみが住む地域だ。

「何してる!お前の住む所はこっちだ。」

ホームレスは差別を受けるので下級階級の地区も住むことは厳しい状況にある。

「ここはどこなんだ?」

「ここがお前の住む所だ。」

彼が連れて行かれたのはトラッシュシュタットだ。ホームレスはここにほとんど住んでいる。トラッシュシュタットは全ての地域から出たゴミを回収する場所だ。隣接する19区はややトラッシュシュタットの臭いが風で舞うことがあるため、ダークマリンで一番家賃が安い地域だ。

この管轄は彼の住む首都ハミルトン意外でも同じだ。ハミルトンは首都なのでセントラルタウンに大統領宮殿がある。

「何だこの臭いは。」

「お前、新入りか?ここは俺の領域だから来るなよ。」

トラッシュシュタットには数人のホームレスがいた。

「何だよこれ!」

ニコラスは驚いた。

「これ?骸骨さ。ここで亡くなった奴のだ。そんな声を出して驚く所じゃない。ここは社会の最下層が集まる場所だからな。」

当たりには遺体や骸骨が転がっていた。

「お前名前なんて言うんだ?」

「ニコラスだ。」

「こんな格好いい奴もホームレスになる時代か。俺はジェームズだ。よろしくな。」

「来るな。」

野良犬や狼、カラスや鳩などに追いかけられた。

「こいつ等凶暴すぎる何とかしてくれ。」

ジェームズが目力で睨みつけると大人しくなった。

「ここら辺は社会から不必要とされた動物達が集められた場所だ。セレブ達に捨てられたペットは皆ここに行く。」

「でも何で狼や鳩がここに?」

「人間に取って害があると見なされれば、このゴミだらけの地域に収容されるんだ。特殊な電磁波で人間は意外はここから出ることは出来ない。」

「何でも知ってるんだな。」

「ここのことは俺に聞いてくれ。」

ニコラスはこれからトラッシュシュタットに住むことになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ