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死者の国

作者: 藤村涼太

お越しいただき有難うございます。藤野と申します。

初作品なので、至らぬ点が多々あるとは思いますが、ご容赦ください。

私の友人がとあるものを「死者の国」に喩えるの聞いて、美しく感じたので書かせていただきました。

死者の国とはどこなのか、想像しながら読んでいただけると幸いです。




ーーここは死者の国だ。



死者の国という名前に反して、この国には死者だけでなく、数は少ないけれど生者もいる。現実世界と違うのは、年齢、性別、人種、生きていた時代……まるで違う人たちが同じ国に住んでいて、多くの人が何一つ言葉を喋らないところだ。更に彼らの中で喋る人に出会えたとしても、まだ生者である僕の耳には聞こえない。彼らの言葉は目で読み取ることがほとんどだ。同様に、僕が彼らの言葉にどれほど共感しようと、憤ろうと、死者である彼らにそれを伝えることができない。つまり会話をすることはできないのだ。


また、彼らには表情がない。喋っている内容から推測はできるのだが、その推測が合っているのか間違っているのかは解らず、確認もできない。ただ、僕たちと同じく喜怒哀楽があるのはわかる。彼らも元々は生者であったのだから。



この国は僕らの世界とは次元が違う。既に死者となった彼らにはお金も、食べ物も必要ない。さらに彼らは必ず自分の世界を持っている。この世界というのは一概に定義するのが不可能なほど多様に存在している。彼らに必要なものといえば、自分の世界を大切に保管しておくための棚くらいだろう。


いくつもの世界を創造している人もいれば、一つの世界を大事そうに抱えてる人もいる。


生前の自分の世界を正確に模倣している世界もあれば、生前の理屈では説明もつかないような独特の世界もある。


その世界の中に入り自分の考えを熱く語っている人もいれば、自分ではない誰かを創り、動かして微笑んでいる人もいる。


僕はこの国と現実世界とを行ったり来たりしているけれど、この国の住人ではない。彼らには僕の姿は見えず、僕は彼らの世界をただ眺めることしかできない。それゆえ、例え僕がどんなにこの国の人を大切に思っても、例え誰かの創った世界の人に想いを寄せても、感謝の言葉も言えないし、贈り物も渡せない。


だけど僕はこの世界を愛している。彼らは一度言った自分の意見を変えることは無く、また永遠にそこにいてくれる。例えこちらからは触れられなくても、この独りよがりな感情を伝えられなくても、彼らの声なき言葉は僕の視界を広げ、彼らの見えない世界が僕の心の拠り所となってくれているのは確かなのだから。


ーーここが死者の国だ。



ご読了、ありがとうございました。

死者の国がどこか、わかっていただけましたでしょうか?

私は「本の中」だと考えています。

私の拙い文章から読み取るのは難しかったとは思いますが、私が感じた作者と読者の関係性の不思議について少しでも受け取ってくださったなら僥倖です。

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