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和やかなその日

 庭でお花を眺めたり手入れをして時間を過ごし、満足感を得ると、静かに家の扉を開けて中に入る。


 リビングからはお母さんとルテシアの会話が聞こえてきた。



 私はゆっくりと覗き込むとお母さんと目が合って思わずびっくりした。



「テルル、一緒にお茶を飲まない?」



 お母さんが声をかけてくれる。


 私は「…いいの?」と尋ねると、お母さんは優しく微笑みながら私に返事をする。



 お母さんとルテシアは私の顔を見つめ、優しく視線を交わした後でルテシアが話を切り出した。



「そういえば、テルルちゃんは最近まで何をしていますか?何かエンジョイしてマス?」



 ルテシアは喜々とした表情で目を輝かせながら私に尋ねる。


 私は戸惑いながらも恥ずかしそうに下を向きながら答えた。



「えっと、お花のお世話をしたり……あとは、お父さんとお菓子を作ったり…」



 すると、ルテシアは興味津々で身を乗り出して目を輝かせながら私の顔をのぞき込むように見つめました。


 私はその様子に怖気づいた。


 お母さんはそれを見て「悪い癖が出てるわよ」とルテシアを諫めると、ルテシアは驚いた表情でお母さんを見つめ、パチクリと数回目を瞬きさせる仕草をした。



 ルテシアは席に座り直し、軽くコホンと一度咳き込んでから続けました。


「ふーむ、なるほど…確かに言う通りデス。少し距離感が違いましタネ?ソーリー」



 ルテシアはウズウズとした様子で私に顔を向けました。

「一体、何をクッキングしたのですか!」



 期待に満ちたその表情に私は申し訳なさそうに「…クッキー」と呟くと、ルテシアは大声で


「クッキー!!!ナイスクッキー!!私も食べてみたいです!テルルクッキー!!」



 と大げさに身を乗り出し、手に力が入っている様子が伺えた。


 私は小さな声で話す。



「ジェイが…美味しい美味しいって独り占めしてたくらいだから…」



「おぅ、独り占めしてしまうほどのデリシャスなクッキー…食べてみたいデス!私にも作って欲しいデス」



 とルテシアはニッコリと笑顔を浮かべながら言うと彼女は嬉しそうに席に腰掛ける。



 お母さんは呆れ気味にルテシアに向かって「あなた、クッキーが好きだったかしら…?」と言いった。


 ルテシアはこう答える。



「人からもらえるものなら、私は何でもハッピーになりマス。あ、でもクッキーは本当に好きなんデス!」


 ルテシアは楽しそうに話を続けました。


「でもNo.1に好きなのは、LOVEがこもっていたり、私のために作ってくれる何かデス!大好きデス!LOVEデス!」と彼女は満面の笑みで私とお母さんを交互に見つめた。



「ルテシア、私たちで一緒にクッキーを作る…?」とお母さんが提案すると、ルテシアは大喜びで手を叩きました。



「ワォ!!本当に!?やったー!楽しみデス!」とルテシアは興奮気味に叫びました。



 私たちは一緒にキッチンに向かい、クッキー作りの準備を始めました。


 ルテシアはずっとテンションが高く、様々なアイデアを出しながら楽しそうに材料を選んでいきます。



 お母さんは優しくルテシアの手助けをしながら、私たちを優しく見つめていました。



 そして、私たちが一緒にクッキーを焼き上げる頃にはおいしい香りが広がり始めました。



 ルテシアは胸を張って言った。


「これで私もテルルちゃんの美味しいクッキーを食べることができマース!」




「これじゃあ、お母さんのクッキーになっちゃったけどね…」

 私がルテシアにそう呟くと、彼女は笑顔で返事をした。



「でも、テルルちゃんの味も入ってるから、テルルクッキーなんですよ!」


 お母さんはクスリと笑った。

「なによそれ…」



 そして、私たちは笑顔でクッキーを囲み再びお茶会をした。



 ルテシアはクッキーを一つ手に取り、口に運ぶとじっくりと味わいながら、嬉しそうに頬を撫でる仕草を見せました。



 お母さんと私もクッキーを手に取り、口に運ぶと甘い香りと美味しい味が広がる。

 口いっぱいに広がる美味しさに満足そうな表情を浮かべる。



 そして、お母さんとルテシアは再びおしゃべりを始めました。笑い声や温かい言葉がリビングに満ち溢れます。



 薔薇の花びらが優雅に舞い落ちるような香りが、紅茶の中に溶け込んでいる。



 一口飲むたびに、薔薇の花が心に触れて感性を揺さぶる。滑らかな紅茶の風味と薔薇の香りが絡み合い、心地よい余韻が長く続いた。



 私は紅茶を飲みながら、その芳醇な香りと滑らかな味わいに心を満たされていた。

 薔薇の香りが紅茶に広がり、穏やかな幸福感が私を包み込む。



 お母さんとルテシアの会話に耳を傾けながら、思わず微笑みが零れた。




 彼女たちの声が部屋に満ちる中、私はふと思い出した。


 幼い頃、お母さんが私に紅茶を入れてくれた時のこと、その時も薔薇の香りが漂っていて、私は不思議な安心感を抱いたときのことを。




「お母さん、紅茶を入れてくれたのって…いつから…?」私はそっと尋ねた。



 お母さんは微笑みながら思い出を辿りながら答えた。



「そうね…テルルがまだ小さかった頃におやつの時間にはいつも紅茶を入れていたわ。最初はちょっと苦いと思っていたけれど、徐々にその味に慣れていったのよね…いつ頃かしら、薔薇の香りを入れるようになったの…?」



 私はお母さんの言葉に感謝の気持ちでいっぱいになり、温かい思い出が心に蘇った。



 紅茶の中にはお母さんの愛情と思いやりが込められていたのだと気付いたのだ。



 ルテシアは興味津々な表情で私たちの会話を聞いていた。彼女もまた、家族の絆や温かさを感じていたのかもしれない。



 私たちは紅茶のカップを手にふたたび会話に戻り、薔薇の香りが私たちを包み込む素敵な時間が続いていった。



 その後、夕方の光が優しく差し込む中、時間はあっという間に過ぎていった。



 やがて、私たちはゆっくりとお開きにすることになってお母さんと一緒にルテシアを玄関まで見送った。


 ルテシアはドアの前に立ち、明るい笑顔で言った。



「また来まース!!」



 お母さんは微笑みながらルテシアに対して「来る前に連絡をよこしなさい」と言い、そのまま続けて「それで、これからどこに行くのかしら…」と尋ねた。



 ルテシアの表情が一瞬曇ったように見えたが、すぐに明るい笑顔に戻り「北へゴーしマス!」と元気に答えて出て行った。



 そこには静寂が戻り、嵐が過ぎ去った後のような穏やかさが漂った。



 お母さんは私の肩に手を載せながら「さぁ…お片付けしようね」と優しく言い、リビングの方へと歩いていった。その声には温かさが込められていた。



 私はお母さんの言葉に頷きながら心地よい静寂の中で少しずつ部屋を片付けていった。


 過ごした時間の思い出が胸に深く刻まれる。


 このひと時が私たちの心を癒して明日への活力を与えてくれる。



 それが私たちの幸せな日々を築く道であり、大切な宝物だと心から感じていた。

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