少女の世界
少女はその日の夜。
明るい月の光が差し込む森の中に足を踏み入れて花畑を訪れた。
彼女にとってこの花畑は日常の一部であり、楽しみであり趣味でもあった。花畑の中では、彼女は自分自身を表現し、心を豊かにすることができたのだ。
この花畑に肉食動物が近づくことはなかった。
まるで野生の動物たちが敬遠する禁域のように、花畑から遠ざかっていた。
ここは少女だけの特別な世界であり、彼女は花々と一緒に遊びながら、自由自在に時間を過ごす。
明るい月の光が花畑を照らして花々の香りが漂う中で少女は静かに微笑みながら花たちと交わす会話に耳を傾けた。彼女は優雅に踊る花びらに触れて、その美しさを心の中に刻み込んでいく。
この花畑は少女にとって癒しの場であった。
彼女の心を満たしてくれる存在だった。
一人でいることを決して寂しく感じず、むしろ自分自身と向き合える貴重な時間となっていた。
一人でいる少女の心に過去の記憶が甦るようにある女性の声が響く。
その声は剣幕があり、尖った口調で、少女の心を揺さぶる。
「人間とは関わらないで!」
「この森から一歩も出ちゃダメ!」
「危険な場所に足を踏み入れないこと!」
「私を心配させないて…!」
「…どこに行っていたの!?」
「遅くまで何をしていたの…!!」
――全て、彼女の母お母さんの声であった。
その声は鋭く耳に刺さって少女の心を震わせる。
少女は母親の声を鮮明に覚えていた。威厳に満ちた口調から
悲しみに震える声まで、すべてを思い出していた。
どんなに辛くても落ち込んでも平然としたお母さんが私を心配し涙を流す姿を見せたことを忘れなかった。
お母さんはいつも勇敢で威厳を持ち、私のために心配をして涙を流してくれたことがあった。その姿は私の中で衝撃的であり、忘れることのできないものだった。
私はお母さんにこれ以上涙を流してほしくないと強く思っていた。だからこそ、言いつけを厳守することを決意していた。
心配することのないように私は森から出ることも避け、危険な場所に足を踏み入れないようにしていた。母のためにも、私の行動が母を安心させるならそれでいいともさえ思えた…。
しかし、叱られた後にはいつも母親が抱きしめてくれたことを思い出した。その思い出は少女を少し寂しくもさせた。
夜風が優しく吹いて少女の頬を撫でる。まるで風が心配しているかのように花びらが舞い上がる。
少女はそう思うことで気が楽になった。母親の愛情と温かさを心に抱きながら少女は花畑で横になり、花の香りに包まれながら夜空の星を見つめた。