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大陸没戦~エリア鬼の誕生~  作者: 鍋敷
一日目前半 解き放たれた地獄

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報告

 施設に戻ったポットは、とある部屋の前に立つ。

 そして、その扉を軽く叩く。


「ギルドマスター。いるか?」


「ポットか。まだ配達に行ってないのか?」


「それどころじゃなくなった。話がしたい。」


「急用か? 入ってくれ。」


 部屋の主の許可も得たので、扉を開いて中に入る。

 すると、奥にある机で男性が仕事用の書類を見ていた。


「それで、話とは?」


「エリアが滅んだらしい。ハンターギルドに連絡をいれてくれ。」


「は? 滅んだ?」


 ギルドマスターは、眉を潜める。

 急に言われても、納得が出来ないのは当然だ。

 なので、ポットが例のファイルを見せる。


「うーむ、これは。」


 ファイルの表紙の文字を、ギルドマスターが食い入るように見る。

 そして、中から書類を取り出してから見る。


「ここに書かれているのは本当か?」


「仕事をほっぽりだしてまでつく嘘じゃねぇだろ。信じられないなら、表の自走船を見てくるといい。これを伝えた奴の死体が寝かされてあるだろうよ。」


 頼んだ通りなら、今頃は外に運ばれているだろうか。

 それを見たら、誰だって信じてしまうはずだ。

 しかし、首を横に振るギルドマスター。


「いいや、信じよう。だとしたら、すぐに知らせた方が良いな。」


「あぁ、頼むぜ。」


 立ち上がったギルドマスターが、通信機を取って番号をうつ。

 すると、すぐに向こうと繋がった。


「九の地区の商業ギルドのマスターだ。同じ地区のエリアの施設で異変が起きたらしい。調べてくれ。」


 それだけ伝えると、しばらくの沈黙が走る。

 それからしばらくして、再び話し出す。


「そうか、やはりな。すぐに対応を求む。あぁ、頼んだ。」


 ギルドマスターが通信機を置く。

 会話が終わったのだろう。


「どうだった?」


「音信不通のようだ。誰かしら着いてる筈なんだがな。」


 大事な通信に対処が出来るよう、必ず人が着いているはずだ。

 それでも出ないという事は、何かしらの異変が起きている事で間違いが無い。


「やっぱり何かが起きているって事か。」


「可能性は高いだろう。今、この地区のハンターを派遣するつもりのようだ。ここにも、お偉いさんが来るらしい。すまないが、対応の準備を済ませてくれ。」


「丁度良いな、こいつを届けたかった所だ。今すぐ準備する。」


 何が起きているかの調査に動いてくれるようだ。

 これで、預かった書類を届ける事が出来る。

 ファイルを持ったポットは、対応の準備をすべく自走船へと戻る。


「おい、寝かしてやったか。ん? どうしたんだ?」


 そこに近づくと、ある異変に気づく。

 布でくるまれた死体の周りに、人が集まっている。

 そこにいる者達は、ぼうっと空を見ている。


「おいっ。何してんだっ!」


 その中の知り合いに、ポットが叫ぶ。

 その声で、ここにいる者達がはっと意識を取り戻す。


「お、おう。ポットか。取り合えず、中のやつを布で包んでおいたぜ。」


「あ、あぁ、助かる。しかし、どうしたんだお前達。」


 ここにいる者達が、頭を抱えて唸っている。

 誰もが苦しそうにしている。


「い、いや。こいつを運んでたら粉みたいのが大量に出てな。」


「粉だと?」


 地面を見ると、確かに粉のような物が巻かれている。

 先程は無かった物だ。

 死体から出たもので間違いないだろう。

 しゃがんだポットは、それを手で掬ってみる。


「お、おい。気をつけろよ。その粉、やべぇぞ。」


「やべぇつってもただの粉だろ。」


 対したことは無いだろう。

 そう思ったポットは、手に付いたのを臭ってみる。

 その瞬間、いくつもの感情が頭の中で渦巻いた。


「ぐっ、なんだこれはっ。」


 さらに、唐突な嘔吐感を感じて口を覆う。

 しかし、出そうなのは喉からではない。

 感情なのか、本当に嘔吐感なのか。

 区別のつかない何かが口から出ようとしているような錯覚が起きている。


「俺達もそれが舞ったのを浴びてから変になった。迂闊に触れない方が良い。」


「その方が良いな。」


 臭っただけでこうなのだ。

 それ以上だと、どうなるか分からない。

 この粉は危険だと判断して、一度身を引くポット達。


「施設が狂った、か。」


 ファイルの文字を見たポットが呟いた。

 施設が狂った事に、この粉が関係あるのだろうか。

 疑惑を感じるポット。

 そんなポットに、知り合いの男が聞く。


「それで、一体何が起きてんだ?」


「エリアが崩れた。そこの奴らによってな。しかも、そいつらがこちら来るかもって話だ。ここも、ただじゃすまねぇだろうよ。」


「まじかよ。」


 証拠を見たから疑いようはない。

 そうなると、一番近いこの場所は真っ先に狙われる。

 監視しないといけないような奴らにだ。


「まぁ、先程ハンターギルドの本社に知らせたから、何かしらの対処をしてくれるだろうが。」


「でも、相手はエリアを崩すような奴だろ? 大丈夫なのか?」


「分からん。一応、逃げる準備はしといた方がいいな。頼めるか?」


「あぁ、職員に声をかけておくよ。皆も手伝ってくれ。」


 その知り合いの男が、仲間を引き連れて施設へ戻る。

 逃げる準備をしてくれるはずだ。

 事が事だ、何が起きても無駄にはならないだろう。


「ふぅ、忙しくなりそうだ。もう少しだけ待ってくれな。」


 そう言って、剥がれかけの死体の布を掛けなおす。

 そうしていると、外から馬車の音がしてきた。

 どうやら、置いてきた馬車が戻ってきたようだ。


「おーい、ポットさーん。」


「おう、こっちだ。すまねぇな。」


 ポットの前で馬車が止まる。

 運転席には、共にいた部下の男だ。

 言い付け通り、戻ってきたようだ。


「それで、何があったんすか?」


「時間は無い。事情は中で話す。」


 そうして、ポット達も施設へと向かう。

 来たる時に備えて、逃げる準備を進める。

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