表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大陸没戦~エリア鬼の誕生~  作者: 鍋敷
一日目後半 鬼と呼ばれるもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/60

報告

 狂った人の群れを抜けて、再び何もない場所へと出る。

 辺りは日が落ちかけているのか、薄暗くなっている。


「ひでぇな。」


「そうだな。」


 あまりの光景に、衝撃は大きかった。

 もはや、会話をするのもしんどいほど精神が疲労している。


「どうしてこんな目に合わなきゃなんねぇんだ。」


「全くだ。」


 向けられた、憎しみの込もった目を思い出す。

 同じ人間、同じ被害者に向けられたのだ。


「俺達がしている事は正しいのか? 本当に誇りとやらが大事なのか?」


 今までは、誇りを探す事でやる気を保っていた。

 しかし、あの目を見てから疑問を持つようになった。


「俺達のやる事は無駄じゃないのか? このままやる事に意味があるのか?」


 そう思うには、充分な出来事だった。

 どれだけ努力をしても、鬼によって軽々しくねじ伏せられる。

 考える度に、疑問が大きく膨らんでいくのだ。


「分かんねぇよ。」


 悩むベージュの呟きを黙って聞く二人。

 返す言葉が見つからないのだ。

 それからしばらくの沈黙が続く。

 すると、目の前に町が見えてくる。


「町が見えたぞ。どうする?」


「行こう。せめて、ハイグルさんの思いだけでも守るんだ。それが、正解なのかは分からないけどな。」


 何が正解かは分からない。

 だけど、命をかけたハイグルの思いを無駄にする事は出来ない。

 それをしてしまえば、ハイグルの死が無意味になるからだ。

 そんな気持ちを抱きつつ町へと入る。

 そして、ユグリスの案内でハンターの施設に着く。


「ここだ。まずは、俺が話をつける。」


「おう。ポットは小竜を職員に引き渡してくれ。」


「へい。」


 ポットと別れたベージュとユグリスが施設へ入る。

 すると、一人の女性が近づいてくる。


「ユグリス、帰って来たのね。ねぇ、防衛線から連絡が来ないけど知らない? って、皆はどうしたの?」


 ユグリスの後ろを見る女性。

 皆とは、ユグリスの仲間達の事だろう。


「死んだ。防衛線の連中も全滅だ。」


「何てこと・・・。」


 女性が驚き口を押さえる。

 あれだけの戦力が滅んだと言うのだ。

 驚くのも無理はない。


「しかも、一瞬だ。一瞬で全てが滅んだ。相手は、我々が思うより強大だった。」


「ありえないわ。この町の全戦力なのよ?」


「それでも滅んだ。それほどの相手だと思ってくれ。」


 この町の全戦力が一瞬で滅んだ。

 その事実は、相手の恐ろしさを知るには充分だ。

 しかも、被害者はそれだけではない。


「・・・避難者は?」


「見た奴は全員駄目だ。後は、ここに逃げ込んだ奴らだけだ。」


「逃げ込んだ? いいえ、辺りを見ている職員からの報告は無かったわ。」


「なっ、全員やられたとでも言うのか!?」


 避難民の保護をする職員を派遣している。

 しかし、避難民の到着を知らせる報告は無かったようだ。

 それはつまり、誰一人として生き残っていない事を意味する。


「避難民はいない。それを守る者もいない。一体、どうすれば。」


「その事なんだが、話がある。」


「話?」


 女性が聞くもユグリスは答えない。

 代わりに、ベージュが答えるように促す。

 すると、ベージュが前に出る。


「俺は、商業ギルドの商人だ。九の地区の責任者をしている。いや、していたか。」


「九の地区。事件が発生した場所ね。私は、ジェネル。ここの施設の責任者よ。」


 女性の正体は、ここのギルドマスターのようだ。

 どうやら、詳しい話は知らないらしい。


「それで、あそこで何があったの?」


「そうだな。まずは、この資料を見てくれ。」


 ベージュが鞄から取り出したファイルをジェネルに見せる。

 すると、ジェネルは表紙の文字に目を通す。


「襲われた? 確かに、エリアがある地区だけど。」


 エリアがあるから、襲われても仕方ない。

 しかし、それでは済まない被害が出ているのだ。

 少し悩んだジェネルは、中から書類を取り出して目を通す。


「鬼? 四匹のモンスター? たったそれだけの相手にやられたとでも言うの?」


 それらをしでかしたのは、たった四匹のモンスターによってだ。

 普通なら、そのような事で滅ぶ程の戦力ではなかった。


「そのまさかだ。実物を見た俺が保証する。このままでは勝てない。」


 勝つことなど出来ない。

 それを、嫌なほど思い知らされてしまった。


「じゃあ、どうしようっていうの? このまま死ぬのを待てと?」


「いや、この書類があれば何とかなるはずなんだ。その為にも、本部にこの資料を届けたいんだが、俺なんかじゃ会うことすら出来ない。だから、あんたに橋渡しを頼みたいんだ。」


「なるほど。だから、わざわざここまで来たのね。」


 ジェネルが資料を捲っていく。

 そこにある資料は、どれもびっしりと書かれている。

 考え抜いて導きだした物である事が伺える。


「分かったわ。ついて来なさい。本部に連絡をいれるわ。」


「あぁ、頼んだ。」

 

 ジェネルもまた、伝えるべき物であると理解したのだろう。

 二人を連れて、通信機がある部屋へと向かう。


「あれ、マスター? 作戦は終わったんですか?」


「いいえ。その事で、本部と連絡が取りたいの。少し席を開けてくれる?」


「分かりました。ごゆっくり。」


 通信機を弄っていた職員が部屋を出る。

 すると、ジェネルが通信機の受話器を取る。

 それから、通信機のひねりを回す。


「こちら、七の地区のギルド施設。応答せよ。」


 受話器に向かって話し出すジェネル。

 どうやら、本部と繋がったようだ。


「えっ、ギルド長!? えぇ、はい。作戦は失敗。現状、かなりの犠牲者が出ています。えぇ、避難民も。八と九の地区は、全滅と言って良いでしょう。」


 本部に現状の報告をするジェネル。

 すると、受話器の向こうから驚く声が部屋に響く。

 向こうの人物も、そうとう動揺しているようだ。


「それについてなんですが、生存者の一人が本部と連絡を取りたい者がいまして。」


 ベージュの事を知らせてくれたようだ。

 それからの、しばらくの沈黙。

 そして、受話器を離したジェネルがベージュを見る。


「話がしたいそうよ。」

 

 そう言って、ベージュに受話器を渡す。

 それを受け取ったベージュが、受話器の向こうに呼びかける。


「代わったぞ。ハンターギルドの本部で間違いないな?」


『いかにも、ここはハンターギルドの本部。そして、私がその長を務めるギルド長だ。』


 ギルドで一番偉い役職のギルド長。

 受話器の向こうの人物がそう名乗る。

犠牲者1628(1157) 確認されていない犠牲者含む

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ