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銀河戦記/脈動編  作者: 神崎理恵子
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最終章・和解の地にて Ⅰ



 惑星アグルイス地上に墜落したアルビオン軍旗艦ヴァッペン・フォン・ハンブルグ。

 艦内では、艦の修復や気密性のチェックが行われていた。

「しようがないとはいえ、とんでもない所に降りてしまったな」

 司令官のヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐が恨めしそうに呟く。

「いつまで持ちますかね。救助隊が来る前に食料が尽きて死ぬか、損傷が広がって胞子が侵入して死ぬか、どちらになるか」

「救助信号は打ち上げているんだ、必ず救援に来てくれるさ。友軍かもしくは……」

「イオリス共和国ですか?」

「そうだ。彼らなら助けてくれるかも知れない」

 これまでの対談などから、平和的な国家であることは承知していた。

「そんなことより、奴らがさらに集まってきていますよ」

 指さすモニターには、ぞろぞろと集まってくる植人種達が映っていた。

 その中から一人が前に進み出た。

「何か言いたそうな顔していますね」

「外部マイクスピーカーのスイッチを入れてくれ」

 オペレーターが機器を操作すると、外の植人種の声が届いてきた。

『自分は、族長のトゥイストーである。そなたらの所属を教えてくれ』

「私は、アルビオン共和国軍大佐ヴィルマー・ケルヒェンシュタイナーだ」

『そうか、アルビオンか……』

 と言って上を仰ぐトゥイストー。

『どうやら別の来訪者がやってきたようだ』

 その声に、

「モニターを上空に切り替えてくれ」

 指示を出すケルヒェンシュタイナー。

 画面が切り替わり、上空の映像に切り替わった。

 上空の一点から黒い影が舞い降りてくる。

 どうやらイオリスの上陸用舟艇のようだ。

「助けに来たのでしょうか?」

「それは有り難いが、まずいことになるぞ」

「胞子のことを知らせなくてはいけませんね」

「そうだな。連絡を入れてくれ」

「分かりました。共倒れになっては助けて貰えません」

 通信士が通信を繋ぐ。

 モニターにトゥイガー少佐が映し出される。

『トゥイガー少佐です。救難信号を受け取りました。これから助けます』

「ちょっと待ってください。ここの惑星の大気には、人を死に至らしめる物質が漂っているのです」

 副長のゲーアノート・ノメンゼン中尉が警告する。

『ご警告ありがとうございます。しかし心配は無用です、我々には十分な対策が用意してありますから』

 トゥイガー少佐は、惑星降下前に大気組成の下調べを充分に行っており、この惑星が開発前のイオリスの大気に似通っていることを確認していた。

 冬虫夏草の殺人胞子が蔓延していることも承知していた。

 しかしながら、イオリスの科学部は胞子に対する特効薬の開発を終えていた。

 発症状況に応じて四段階の対処法がある。

1、感染初期における胞子の発芽を抑制する薬。

2、発芽後の根の成長を抑制する薬。

3、根を張り始めた後には、人体無害の除草剤の開発。

4、最後の手段は、中性子線照射機による体内根茎の滅却。

  (三大肥料であるリン・窒素・カリウムなどの放射性同位体を注射して、植物が取り込んだ箇所を中性子照射で限局的に核反応を起こして組織を破壊する)


 上陸用舟艇は、ハンブルグの隣に降り立った。

 同様にして食人種がそちらにも集まってくる。


「イオリス艇より入電しました」

「繋いでくれ」

「繋ぎます」

 モニターにトゥイガー少佐が出る。

『とりあえず状況確認のために降りてきました。本格的な救出活動はこれからです』

「申し訳ない」

『ところで、取り囲んでいる生命体はご存じですか?』

「ああ、我々は植人種と呼んでいるが、動物体と植物体が相利共生している生命体のようだ」

『なるほど、そうみたいですね』

「おっと、彼らからお呼びが掛ったよ。宇宙服を着て着いてきてくれだそうだ」

『分かりました。二十分後に外で落ち合いましょう』

「了解した」



 二十分後、生物学者のコレット・ゴベール、言語学者のクリスティン・ラザフォード、技術主任のジェフリー・カニンガム中尉を同行させて地上に降り立ったトゥイガー少佐だった。

 一方のヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐の方も、副官のゲーアノート・ノメンゼン中尉と通信士のヴィルヘルミーネ・ショイブレ少尉を連れてきていた。

 ミュータント族の方も呼ばれてきていた。族長ドミトリー・シェコチヒンと瞬間移動のエヴゲニー・ドラガノフ、遠隔視のニーナ・ペトリーシェヴァである。

 そして一同の前に立つのは、この惑星アグルイスの主ともいうべき族長トゥイストーである。

「惑星アグルイスへようこそ。皆さんにお見せしたいものがあります。着いてきてください」

 と言うと、先に立って歩きだした。

 植人種の族長トゥイストーに導かれて、奥深い森へと進んでゆく。


 森を抜けて開けた場所に出ると、眩いばかりに輝く大海原と砂浜が広がっていた。

「あれをご覧ください」

 とトゥイストーが指さした先には、緑色の植物に覆われた小高い山のようになっている物体があった。

 その所々から黒光りする金属製の地肌が覗いて見えていた。

「あれは?」

 誰ともなく質問する。

「我々の祖先がこの地にやってきた乗り物。開拓移民船です」


 開拓移民船!


 その言葉を聞いて、一様に驚く一行だった。

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