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銀河戦記/脈動編  作者: 神崎理恵子
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第八章・ミュータント族との接触 Ⅴ



 ミュータント族前進基地クラスノダール。

 輸送船が盛んに発着を繰り返している。

 管制塔から指揮を執っている基地司令官イヴァン・ソルヤノフ。

 傍らに立つ副官フリストフォル・イグルノフが首を傾げている。

「まさか後方司令部が撤退許可を出してくれるなんて意外でした。一旦引いて後方の基地で迎撃するらしいです」

「敵との戦闘記録を見て例のエネルギー兵器に興味を持ったようだ。敵船を鹵獲して技術を盗む気だ」

「鹵獲? 可能ですかね」

「本星より秘蔵のESP部隊を呼び寄せるらしい」

「ESP部隊! それは頼もしい増援ですね」

 ミュータント族の中には、一定の割合で超感覚的知覚などの特殊能力を持った者が生まれることがある。

 主に精神感応によって、相手に幻視や幻聴などを引き起こす才能である。敵兵を惑わして戦闘不能に陥らせることができ、その間に総攻撃して撃沈するなり艦を鹵獲するなりできるわけだ。

 但しESP要員は、能力持ちの出生確率が極端に               低いので人員に限りがあり、ここぞという時にしか出撃することはない。


「無償で基地を明け渡すつもりはない。奴らが降り立ったら、目を丸くする罠を仕掛けておく」

 基地のあちらこちらに、自爆装置が取り付けられていった。

 いわゆるブービートラップである。

 敵が近づいたり、設備に触ったりしたら自動的に爆発する。



 軍属などの一般住民が輸送船に乗り込み後背の基地へと出発する。

 技術者が基地内の仕掛けを終えて、最後の船が基地の住民を乗せて惑星を離れたのは、撤退命令が出てから十八時間後だった。

「総員、撤退準備完了しました」

「よし、速やかに撤退する」

 全艦、ゆっくりとクラスノダールを離れ始める。

 スクリーンに映る基地が遠くなっていくのをを眺めながら、イグルノフ副官が感慨深げに呟いた。

「無骨な惑星基地でしたけど、撤退するにつけて改めて見つめなおすと、郷愁が呼び覚まされますね」

「そうだな。岩盤をくり抜いて汗水垂らして作り上げた血と汗の結晶だからな」

「我らと同様にこの惑星に目を付けていた銀河人を近づけさせないために突貫工事でやりましたからね」

 やがて、後方のノルトライン=ヴェストファーレン星区前線基地クレーフェルトへと撤退していった。



 ミュータント族の首都星、惑星都市サンクト・ピーテルブールフ。

 宇宙港から一隻の艦が宇宙へ舞い上がってゆく。

 やがて周囲から戦艦が集まって来て、その艦を護衛するかのように周りを囲い込んだ。

 艦の名前は軽巡洋艦スヴェトラーナ、ESP要員が搭乗している。

 艦橋内には、正面スクリーンに対して扇状に座席が設けられ、ヘルメットを被った人々が座っている。

 彼らはESP要員で、ヘルメットから延びたケーブルは精神増幅装置に繋がれている。中には生命維持装置に繋がれている者もいるが、筋萎縮性側索硬化症の患者であり、身体は動かせないがそのハンデを補うように超能力に目覚めたようだ。

 乗員達の意思疎通も、言葉ではなくケーブルを通して念波で行われている。

『微速前進!』

 扇の要にいる人物が指示を、声を出さずに下令する。

 彼の名はドミトリー・シェコチヒン。

 その名は、伝統的にミュータント族の族長が名乗ることになっていた。

 機関担当が念ずると、機関室のエンジンが回りだす。

 機関室には人は誰もおらず、念動力で動いている。

『機関全速、前進基地クラスノダールへ全速前進!』

『面舵三十度』

『機関全速!』

 ゆっくりと進み始めるスヴェトラーナ。

 それに付き従うように、他の艦艇も動き出す。

『全艦、予定進路に入りました』

『よし、ジャンプしろ!』

 艦影が揺らいだ次の瞬間、すべての艦艇が消え去った。

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