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銀河戦記/脈動編  作者: 神崎理恵子
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第六章・会敵 Ⅳ



 時間を少し遡る。

 ここはミュータント族の前進基地クラスノダール。

 基地司令官イヴァン・ソルヤノフは、副官のニコライ・クニャーゼフから今朝の報告を聞いているところである。

「隣接する散開星雲で、怪しげな交信が頻繁に行われています。調査に向かった船との連絡が途絶えました」

「銀河人の奴らか?」

「銀河人のいた星は我々の冬虫夏草爆弾で壊滅させたはずです。それに電波の種類も銀河人とは異なっています」

「ではどこの種族か?」

「もしかしたら……」

「なんだ?」

「伝承にある天の川人ではないでしょうか?」

「天の川人だと?」

「一万年の彼方の次元の狭間から現れ、災いをなすという話ですが……」

「そうか……我々の祖先が誕生してから、一万年も経ったのか」

「ですね」

「どちらにしても、災いを成すというならば排除するだけだ」


 一万年も経てば歴史の事実も忘れ去られ、全く異なった伝承として受け継がれてゆくこともある。時の政権によって、自己・自国の都合の良いように改竄させられることも。

 次元の狭間を通って一万年前の過去にやってきたのは自分達の方だという事実は忘れ去られているようだ。


「念のために、索敵を出すか」

「フョードル・グヴォズダリョフにやってもらいましょう」

「そうだな。イヴァン・マトヴィエンコのヴォストーク号の修理は終わっていないしな」



 戦列艦サラートフ号と従属の二隻、コンスタンチン号・スヴァトーイ号を引き連れて出発するグヴォズダリョフ。

「隣の星域から、未確認の種族が我々の星域へと向かっているらしい。それを撃退する任務を与えられた」

「聞いていますよ。天の川人だとか、どんな種族なのでしょうか?」

「分からんな。銀河人相手でも面倒なのに、新たな敵は手っ取り早く片付けるに限る」

「コース設定完了しました」

「出発する!」

 ゆっくりと動き出す三隻の艦艇。



 やがて色鮮やかな星雲に到達する。

「七色星雲というところだな」

「ここから先は、敵の勢力圏かと思われます。慎重な行動をお願いします」

 扉が開いて車椅子に乗った女性が入室してくる。

「未確認船が近づいています」

「ふむ。サーシャ見えるのか?」

 グヴォズダリョフが声を掛けたアリクサーンドラ・メリキヤナ(愛称サーシャ)は視覚障碍者で虚弱体質である。

 目は見えないが、その感覚を補完するように遠隔透視の能力を有している。

「右舷二十度、七十光秒に接近する移動物体があります」

「分かった。面舵二十度転進せよ! 全速前進」

「面舵二十度転進!」

「全速前進!」

 操舵手と機関長が復唱する。


 数時間後、会敵する。

「敵艦発見!」

「やはりいたか。戦闘配備だ!」

 艦内を自分の部署へと駆け回る乗員達。

「第一主砲配置に着きました」

「弾薬庫、準備よし!」

 次々と戦闘配備の報告が上がってくる。

「全艦、戦闘配備完了しました」

 副長が報告する。

「敵艦、回頭してこちらに向かって来ます」

「こちらに気づいたか。よし、どれほどのものか見てみようか」

「全速前進せよ!」

 副官の下令に続いて、速度を上げて近づいてゆくグヴォズダリョフ艦。

「無線に感あり、全周波で交信を試みているようです」

 通信士が報告する。

「こちらからも返信をしてみますか?」

「必要ない。どうせ言葉も分からんのだ。我々の前に立ちはだかる者はすべて敵だ」

「主砲の射程内に入りました!」

「撃て!」

 砲弾が敵艦に一直線に向かう。

「着弾します」

 激しい閃光が前方に広がる。

「やったか?」

 目を凝らす乗員。


 粉々になった艦が浮遊しているはずだった。


 しかし目に映ったのは、悠然と前進してくる敵艦だった。

「馬鹿な! 外れたというのか?」

「敵艦、反撃態勢に入ったもようです」

「攻撃を続行する。面舵二十度!」

 艦の舷側を敵艦に向けて、後部砲塔をも射撃可能にさせるためだ。

 古来より使われていた砲撃戦で迎え撃つ体勢に入った。

 艦砲を舷側に揃えた戦列艦においては、当然の戦い方である。

「敵艦、真っ直ぐ向かって来ます」

「愚かな。砲撃の的になるつもりか?」

「あ、あれは何でしょう?」

 指さす敵艦が怪しく発光していた。

 次の瞬間だった。

 艦が激しく震動して、投げ出される乗員が続出した。

「な、なんだ? どうした?」

「攻撃されました!」

「損害報告しろ!」

 立ち上がる乗員達。

 やがて各所から報告が上がってくる。

「エンジン部に被弾、機関出力七割低下、機動レベルを確保できません……」

「コンスタンチン号撃沈、スヴァトーイ号中破なるも航行は可能」

 意気消沈の艦橋員達だった。

「たった一発で……」

「相手方は、引き続き交信を求めているようです」

「今更交渉もないだろう……。捕虜になって蔑まれるよりも、最後まで戦ってミュー族の誇りを見せるのみだ! 全砲門、全弾撃ち尽くせ!」

 ありったけの弾薬を討ちまくる艦艇。

 やがて、視界が真っ白になってゆく。


 ミュータント族艦隊は全滅した。

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