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銀河戦記/脈動編  作者: 神崎理恵子
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第五章・それぞれの新天地 Ⅳ


 アレックス・ランドール率いる開拓移民船がマゼラン銀河の端へと漂着してから、およそ一万年の年月が過ぎ去った。

 マゼラン銀河は、天の川銀河系人(以下銀河人と略)・ミュータント族(以下ミュー族)・植人種の三勢力が、領土を巡っての勢力争いを繰り広げていた。



 銀河人の艦隊が航行している。

 旗艦ヴァッペン・フォン・ハンブルク(戦列艦)から艦隊の総指揮を執っているのはヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐である。


「前方に敵艦!」

 レーダー手のナターリエ・グレルマン少尉が報告する。

「ミュー族か?」

 艦長のランドルフ・ハーゲン上級大尉が確認する。

「そのようです。敵艦の数は十二隻」

「こちらは十四隻だ。まあ互角だな」

「敵艦進路を変えました」

「こちらに気づいたか。全艦に戦闘配備だ!」

 敵艦隊は単縦陣で接近しつつあった。


 単縦陣とは、先頭に司令官の乗る旗艦、二番手には副司令の副艦、そして最後尾に第三位の司令の乗る艦という具合である。最後尾の司令官は、旗艦がやられるなどして、全艦反転撤退する場合に指揮を執るためである。

 英・米国海軍の階級名もこれに由来している、

 admiral(海軍大将)

 vice admiral(海軍中将)vice(次の)

 rear admiral(海軍少将)rear(後ろの)

 単縦陣は、敵のいそうな場所で無線傍受されないように動く時に、前の艦に付き従うだけで良いので、会戦となる前には都合が良い。


「右方向に展開して並べろ!」

「丁字戦法ですね」

 副長のゲーアノート・ノメンゼン中尉が答える。

「その通りだ。各砲塔左へ旋回!」

 丁字戦法は、西暦1904年の日本海海戦で日本軍がロシア軍バルチック艦隊に勝利し、逆に1944年のレイテ沖スリガオ海峡海戦で日本軍が、オルデンドルフ少将率いる米国戦艦部隊にとどめを刺された戦法である。


「左舷に火力を集中させろ!」

 この時代、銀河人もミュー族も宇宙戦艦は、艦の前後に艦砲を塔載した戦列艦と呼ばれる物が主流である。

 なので、前後の砲を最大限活用するためには、艦の舷側を向けあう必要があった。

 現時点では、ビームエネルギー兵器の開発までには至っていない。


「敵艦も右旋回を始めました」

「遅いな。こちらの方が先に砲撃開始できる」

 最後尾のヴェルナー・シュトルツェ少佐率いる戦列艦フリードリヒ・ヴィルヘルムも配置に着いた。

「全艦配置に着きました」

「よし、攻撃開始!」

 敵艦隊が展開を終える前に、先制攻撃を加えることができた。

「砲塔だ。砲塔を狙え!」

「目標、敵砲塔にセット完了しました」

「撃て!」

 砲塔に対して集中攻撃が始まる。

 次々と破壊されていく敵艦砲塔。

 攻撃力の落ちた敵艦隊は撤退を始めた。

 右転回したその隊形から、すれ違いを終えて、そのまま離れるように全速力で進んで行く。

「敵艦隊、撤退していくようです」

「ふむ、あまりにも簡単に撃退できた。深追いはよそう、罠かもしれないからな」

 追撃したら、他の艦隊が待ち伏せしているかも知れないと考えたようだ。

 やがて双方は遠く離れていった。

「艦の損害をチェックしろ」

「了解しました」

 報告が上がってきて大したことはなかった。

「基地に帰るぞ。全艦、帰投準備!」

 戦闘宙域から離脱する艦隊。


 ノルトライン=ヴェストファーレン星区にある、前線基地クレーフェルトに帰還した銀河人艦隊。

 この前線基地もそうだが、占有惑星としたものの、ほとんどが惑星開発は進んでいない。

 まずは軍事施設を建造したら、守備艦隊をおいて次の星へと向かう。

 なぜならミュー族との惑星占領&星域確保競争を行っているからである。

 のんびり惑星開発を行っていたら、いつの間にか周囲をミュー族に囲まれていた、ということになりかねないからである。

 とうぜんのこととして、星域のあちらこちらでミュー族艦隊との戦闘が繰り広げられていた。

「補給艦隊はいつ到着する?」

「およそ三か月後の予定です」

「そうか……」

 補給物資や戦艦などの増援は、すべて首都星アルビオンから護衛艦に守られて 送られてくる。

 護衛艦隊はそのまま惑星防衛艦隊となり、現防衛艦隊は新たなる星探しへと出発する。もしくはその反対もありうるが。

 惑星探査の進路は、アルデランからマゼラン銀河を時計回りに進行していた。



 撤退するミュー族の艦隊旗艦ヴォストーク艦橋。

 先の戦闘による損害報告を、副長ヴィチェスラフ・クルガープキン大尉から受けている艦長イヴァン・マトヴィエンコ少佐。

「ペテルゴーフ、サビヤーカの損傷が酷いですが、何とか航行は可能です」

「そうか……」

「反転追撃してきたら全滅してたかもしれません」

「まあ、相手もそれなりに損害を受けていたのだろう」

「この宙域を警戒区域に設定しておきます」

「よし、クラスノダールに帰るぞ」

 数時間後、前線基地であるクラスノダールに戻ってきた。

 戦闘で負傷した者達が艦から降ろされて、空港そばの医療センターへと運ばれてゆく。

 マトヴィエンコ少佐は、彼らの慰問に病室を回っていった。

 病室でベッドに横たわる兵士たちに、励ましと労いの言葉を告げる。

 病院に併設されて、クローン人間を生み出す殖産施設がある。

 培養カプセルが立ち並んでおり、中にはクローンされたミュー族が浮かんでいる。



 ミュー族の探査は、惑星都市サンクト・ピーテルブールフから、マゼラン銀河を反時計回りに進んでいた。

 両国間で交渉したわけではないが、相手国との接触を極力避けようとすれば、首都星の位置から自然の流れだろう。



 時計回りと反時計回り、それぞれが順調に開拓を進めて銀河を進んでいたが、ここノルトライン=ヴェストファーレン星区で、遂に両者が出会い戦闘行為に至ったのである。

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