ヤンデレ悪役令嬢オフィーリアの永遠の贈り物、愚かな王太子殿下に送る子守唄、これであなたは私を忘れられない永遠に……深紅にのせて贈ります。婚約破棄からの破滅の物語。
「オフィーリア、オフィーリア、やめろ!」
「うふふふ、あはははは、見て綺麗ですわ、綺麗ですわ、ほらほらほら!」
私は両手に花をもってくるくると踊ります。ああまるでこれはオルゴールの飾りのお人形さんのようですわ。
くるくるくると私は踊り狂います。 頬に風が当たりましたわ。ああ、冷たい風が心地よいですわ。
「……落ちる、ほら、僕のところにもどってきてくれ!」
「レイモンド様、ほらほら、おやすみなさい、優しい母の腕に抱かれ、ゆっくりとゆっくりとおやすみなさい」
私は歌いながら、一本、また一本、手に持った花たちを落としていきます。ほらひゅううっと地面におちてぐしゃり、とても美しく散りましたわ。この歌はあなたが唯一教えてくれた子守唄でしたわね。
あなたのお母さまが唯一歌ってくれた、唯一の愛だと、だから私も歌います。愛の歌を。
「やめてくれ、僕は君を失いたくないんだ! 婚約破棄をしたいってオフィーリア!」
うふふ涙を目にいっぱいためて、手を差し出す愛しい愛しい私のあなた。
永遠を手に入れたいのですわ。
そして今から永遠を手に入れるのですわ。婚約破棄宣言はそのはじまりですわ。
これであなたに咎は……。
『僕はあんたを愛していない、オフィーリア、だからあんたも好きなようにすればいい』
王太子の婚約者に選ばれたとき、あなたはそういわれましたわ。
王太子の婚約者になりたいんだろ? なら浮気でもなんでもしてくれ黙認するからと!
女たちと遊び歩くあなたを見て、私の胸は嫉妬に焼かれましたわ。でもあなたはいくらいっても信じてくれませんでしたわ。私はあなたを愛していますと!
私は王太子ではなく、あなたの婚約者になりたかったのですわ! レイモンド様!
「あはははははは、ほらほらほら、見てくださいまし、世界ってこんなにきれいですのね!」
「オフィーリア、頼む、お願いだ、こちらに!」
「世界ってきれいですわ、そしてそして永遠も美しいですわ、ほら、レイモンド様、きれいですわ、空があんなにもほら青い」
私はくるってしまったのでしょうか? いえいえ違います。
私は狂ってなんておりませんわ、ねえねえ、レイモンド様!
小さいころ、私は引っ込み思案な子供でしたわ、貴族の令嬢としてふさわしくないといわれました。
そんな私を見て声をかけてくれましたわよね?
『オフィーリアの小鳥が死んじゃったの……』
『いつか生命あるものは消えていく、だからこそ美しいんだ、埋めてやろう。世界にこれであんたの小鳥は還るんだ生命は永遠だ』
うふふ我が家の庭で飼っていた小鳥の冷たい体を抱いて泣きじゃくる私に、なぜか陛下についてお忍びででわが侯爵家にきていたあなたはいいましたわよね。
まだ十歳なのに、主神オーディン様の教義とは驚きましたわ。
あれからあなたは私にとって永遠になりましたのよ。
「ほらほら、ふふ、レイモンド様、ここまでおいでなさい、鬼さんこちら!」
「……やめろお、オフィーリア、落ちる、お願いだ!」
「……うふふあははははは、白い小鳥は翼をやられて、そして翼をなくした小鳥は永遠を手に入れた、土に還り世界に還る」
私は歌いながら踊ります。そして足がふわっと石畳から離れますわ。うふふふふ真っ青になって駆けてくるレイモンド様おかしいですわ。
「僕がそこにいくまで!」
「あらあらそれではみなさんごきげんよう」
私は踊るのをやめました。そして優雅にドレスの裾を持ち上げて、空に一歩足を踏み出します。
レイモンド様が泣きながら走ってきて、手を伸ばして……。
「あなたはこれで私を忘れられませんわ、永遠に」
「やめろおおおおお、オフィーリア、お願いだ、ああ、オフィーリア、オフィーリア、オフィーリア、ああ僕は君を!」
うふふふ、泣きながら手を空中で泳がせるレイモンド様、とても美しいですわ。
その叫び声、そして花々が空中に散っていく、世界が世界があなただけに染め上げられる。あなたはなくなったお母さまが陛下よりほかの男たちを愛したから、女など信じないといいましたわよね?
うふふ、女だから私もみなと同じと? だからだれでも体を重ねると! いえいえ違いますわ。
これであなたは永遠に私を忘れられない。
そして……私はあなたを永遠に手に入れた。
レイモンド様、あなたはこれで……私を忘れられない。
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ヤンデレ需要あれば詳細かきたいとは思います。